トラブルに強いケージのレイアウト
巣箱やトイレなどの飼育用品を、なぜケージのそこに置くのか、どんなトラブルを回避できるのかを、できるだけ詳しく解説しています。
飼育用品を生態や本能に逆らわない様に配置することで、トラブルに減らし、衛生的で、世話の手間も減らせ、しかも経済的な、長い飼育経験や相談から導き出した無駄の少ない、このサイトオリジナルのレイアウト方法です。
ハムスターのトラブルのほとんどが「縄張り(なわばり)」に関係するため、トイレを覚えない、ケージを噛む、懐かないなどトラブルの原因だけでなく、病気の兆候などの変化も行動から気づきやすくなります。
ケージの中が安全で快適だと思えると、ペットらしいのんきな姿と、野性味溢れる活発な姿と両方の姿を見ることができ、飼育がさらに楽しくなります。
縄張りと行動圏の違いを理解しよう
「縄張り」には「行動圏」が含まれていることがありますが、このページでは説明のために使い分けています。
飼い始めて1ヶ月くらいは最低限の世話だけにする理由は、飼い主が天敵ではないことだけでなく、この空間をハムスターに理解してもらうためです。
縄張り
「縄張り(テリトリー)」は「居住空間」のことです。
ハムスターでは巣穴の中、人間に例えると家の中です。
ハムスターは単独生活する動物なので、自分以外がこの空間に入ることを極端に嫌います。
ベテラン飼い主が干渉しない空間で、初心者やハムスターを触りたがる飼い主が、見たがったり手を入れたがる空間です。
四角いケージの中に立体感のない長い巣穴を擬似的に作るため、意外と広いスペースが必要で、ケージ小さかったり形状が悪いと効率よく作られません。このページのレイアウトを参考すると、1メールくらいの長さの巣穴ができます。
このサイトでは、「飼い主からの死角」と表現していることが多いです。
行動圏
「行動圏(ホームレンジ)」は、「狩猟のために頻繁に出歩く空間」です。
食べ物が少ない土地に住み、食べ物を巣穴まで運ぶためにほお袋を進化させた動物のため、野生のハムスターは行動圏が非常に広く、ケージの広さだけで行動圏を再現しようするのは不可能です。
人間に例えると、学校や職場、食料品店などを含めた範囲で、環境の差もあるため単純に数値化できません。
行動圏は共有スペースでもあるため、自分以外のハムスターと出会っても普通は喧嘩になることはありません。繁殖に必要なお見合いスペースにもなります。
飼い主が手を入れても良い空間で、このスペースの一部を使って毎日の世話ができるようにします。
ケージの外を散歩させたり、ケージの外で餌を与えると、行動圏がケージの外まで広がるため、むやみケージから出さないこと。
コミュニケーションエリア
行動学は関係なく、説明用に私が使っている言葉です。
オヤツを欲しがったり散歩に出たいときなど、飼い主に要求があるときに、ハムスターが自主的に待っている場所で、飼い主が呼ぶと歩いてくる場所です。
ここに居るとき以外はハムスターに触れないようにして、行動圏も安全で、ここ以外はケージの外に繋がっていないと考えてもらいます。
ケージの外は?
ゴールデンハムスターの場合は大きなケージで飼っても、ケージの外も行動圏と考えるため、散歩(行動圏の巡回)が必要になります。
他のハムスターは、ケージが広ければ縄張りと行動圏と認識してくれるため、散歩に出す必要はありません。
見られなくなる行動
野生本来の行動に近くなるため、あくび、毛繕い、背伸び、トイレなど、身支度に関する行動が見られなくなります。
当然、眠っている姿も見られません。
ハムスターと全く出会わなくなるのではなく、活動時間や行動にメリハリができるため、餌が欲しいのか、巣箱が暑いから出てきているのかなども、分かりやすくなるため、健康の管理がしやすくなります。
ハムスターも安全な縄張りから飼い主をじっくり観察できるため、飼い主の行動の意味を理解しやすくなり懐きやすくなります。
人間も家を出る前に、顔を洗ったりトイレに行ったりと、身支度を終えると思います。
油断していると天敵に襲われるため、隙ができる行動は巣穴の外では行わないのが、ハムスターの本来の姿です。
快適な飼育環境ができあがると、巣箱から出てくるときに軽く背伸びをしたり、オヤツをもらった後に顔(汚れた口元)を洗う程度しか見なくなります。
身支度を見てしまう場合は、まだ改良の余地があります。
また、身支度が頻繁に見られる飼い方をしてる人の飼い方は、参考にしないようにしましょう。そもそも小動物は、見られることを嫌がり、群れを作らないハムスターはなおさらです。
レイアウトする前に注意すること
普段は飼い主が世話をする右向きを向いて走ります。
飼い主の利き腕
飼い主が右利きだと、右側からケージに手を入れ世話をするため、ハムスターからは右側が外になります。
そのため、縄張りを左に作り、行動圏を右に作ります。
世話をするときに、壁などに腕が当たって世話がしづらくならないように、ケージの横には空間が必要になります。
風の入る方向、光の差す方向などを、利き腕側に揃えておくと、ハムスターが巣の外になる方向を認識しやすく、暑さ寒さにも対応しやすくなります。
飼い主の利き腕が左利きだと、レイアウトが左右が反転します。
家族で交代で世話をしている場合は注意し、主に世話をしている人の利き腕に合わせましょう。
2つ以上扉があるケージは、マスキングテープを貼るなどをして、反対側の扉を開かないようにしましょう。
飼い始めと季節と換毛
夏や冬にハムスターを迎えると、レイアウトが良くても巣箱やトイレを使ってくれないことがあります。
ペットショップではエアコンの効いた室内にあるケージで、野良寝(巣箱以外で寝ている)していることが多いため、すぐに体質を切り替えられないためです。
人間用のエアコンやヒーターでは、巣箱の中より外の方が快適に近くなってしまうため、本能的に巣箱を使おうとしても、巣箱の中が暑かったり寒かったりします。
ペットショップでエアコンの吹き出し口近くにケージがあったり、熱帯の鳥や昆虫と同じコーナーで飼育されていると、夏なのに冬毛が生えていたり、冬なのに夏毛が生えている個体もいます。さらに日照時間でも換毛するため、営業時間や日当たりにも影響します。
色が固定された毛色の変わらない個体(カラーハムスター)で夏毛や冬毛のまま換毛できなかったり、ベテラン飼い主が見ても夏毛なのか冬毛なのか分かりにくい個体もいます。
健康な個体だと換毛も温度への適応も早いですが、ペットショップで同じケージで飼われいる個体や、子供のハムスターは、一緒に寝ることで体温を調節していることも考えて、まずは巣箱の中を季節や体質に合わせて適温にしてあげましょう。
ペットショップの飼育環境をそのまま真似をしたり、とりあえず置いた巣箱やトイレの位置が習慣化してしまうと、その位置に固執してしまうため、正しく設置した飼育用品を上手く使ってくれないこともあります。
人を怖がらない個体だと野良寝しやすく、怖がっていると暑さ寒さを我慢して巣箱を利用し続けることも忘れないようにしましょう。
ゴールデンハムスターの注意点
ゴールデンハムスターは本能に忠実で、よほど無茶なレイアウトにしない限り利用してくれます。
巣箱の中が暑かったり不衛生になっても、巣箱を使い続けようとするため、トラブルが起こっても見つけにくいことがあります。
巣箱の外で寝ていると思ったら、巣箱の中が運んだ餌で巣箱に入れなくなり、ハムスター自身は寒さで弱っているなど、巣への固執が異様に強いため、自分の健康より本能を優先してしまうことがあります。
逆に巣箱を利用してくれない場合は、本能に勝る大きな問題がある可能性があります。
散歩に出す場合は、ケージや飼い主に十分慣れてからです。最初は危なっかしいですが、ケージの外に砂浴び場や餌置き場を置いても、うまく活用してくれるようになります。
ジャンガリアンハムスターの注意点
ジャンガリアンハムスターは人間をあまり怖がらず、食べることを優先するため、飼い主の影響を受けやすいです。
肥満になったり、おかしな飼われ方をしているのは、だいたいジャンガリアンです。
餌が待ちきれず巣箱の外で寝たり、巣穴のトンネルを使わず障害物を乗り越えて直線的に移動しようとするなど、飼い方が悪いとトラブルが増えてしまいます。
本能通り行動できると怪我や病気も最小限に防げるため、必要以上に接しないように、レイアウトだけでなく時間や騒音にも気をつけましょう。
懐きやすいハムスターなので、無理に接する必要もなく、下手に餌付けしてしまうとワガママになります。
ロボロフスキーハムスターの注意点
ロボロフスキーハムスターは温度に影響されやすいです。
恐がりなので、巣箱はすぐに利用してくれますが、それ以上に暑さ寒さに敏感で、食べかけの餌もその場に放置するため、不衛生になりがちです。
暑いと涼しいところを見つけ行動圏で野良寝したり、寒いと餌の水分とヒーターの熱で蒸し風呂状態になった巣箱を使い続けたりします。
特に集団飼育していると、お互いで暖め合うため、冬でも人間が肌寒く感じる程度の温度なら、巣箱を使わず集団で野良寝します。
巣箱やトンネルの通気性を確保して、不衛生にならないように工夫しましょう。
懐きにくい以上に、本能に直感的に行動するため、ロボロフスキーハムスターにうまく使ってもらえないのなら、まだまだ改善が必要です。
使いやすい素材
自分で巣穴を拡張する習性があるため、ケージの中に置く物は、動かしたり囓って広げられる物を使った方が、より要求が分かりやすくなります。当然、ケージは例外です。
金属や陶器より、プラスチックの方が軽くて移動させやすい。
木より紙の方が、囓って広げやすく、簡単に移動させられる。
キッチンペーパーは破りにくく、ウッドチップの方が持ち運びやすい。
動かしたくない物や倒れると危ない物は、ストーンベッドで重しをして固定しましょう。
ケージ選び
これでも回し車は最適なサイズより小さいですが、60cm規格のケージにゴールデンハムスター用の飼育環境を作ろうとしても広さが足りません。
まずケージ選びが難問ですが、お金と場所で解決できるため簡単と言えば簡単です。
上から世話をしない
地面を見て生活するように体ができているため、上を見ることが苦手です。さらに、鳥などの天敵に掴まれるときと同じく鷲掴みになるため、頭上に人間の手があることを嫌がります。
水槽タイプのケージだと、飼い主の手が届かない範囲がなく安全な死角を作りづらいため、ケージの正面からハムスターの世話ができるケージが必要です。
扉が広く開かない
飼い主の目や手が届かない場所を作ることも目的なので、ケージの扉から巣箱までの距離が長い必要があります。
正面から世話ができるケージでも、ケージの中央に扉があったり、観音開き(開き戸)で大きく扉が開くケージは、すぐに手が届いてしまいます。
ほとんどのケージは人間基準で、掃除がしやすいように、分解したり奥まで手が入るようになっています。
扉がスライドで開閉(引き戸)するケージは、片側を少しだけ開けることができるため、ほとんど扉を開かず毎日の世話ができます。反対側の扉はただの壁だと考えてもらうことが大切です。
回し車にオシッコをしてしまうと、定期的に洗浄する必要があるため、ケージの扉から回し車を取り出せないと不便です。
飼育用品の取り付け位置が固定されていない
初心者向けのスターターセットのようなケージは、ケージを安く広く見せるために、給水器や回し車などが取り付けられるようになっています。
ハムスターは端や隙間を歩くため、回し車や給水器がケージに固定されているとレイアウトを作りづらく、取り付け穴が外と繋がっているため囓るなどのトラブルも起こります。
野生では自分の意志で縄張りを拡張したり引っ越ししたりできますが、飼育環境だと子供部屋や病室など、状況によってレウアウトを変更する必要があるため、レイアウトが固定されてしまうケージは飼育に不向きです。
広いが広すぎない
ペットショップで勧められたケージなどを、自宅に帰って設置してみると、予想以上に狭いことに気づき、すぐに買い直す人もいます。
必要な飼育用品を置いたり、ケージの内周を巣穴として使うため、60cm規格(横60cm×奥30cm)のケージでも狭く感じるようになります。
逆に広すぎると、死角をうまく作れず苦戦したり、世話が大変になることもあります。
ベストな選択は?
サイトの利用者との相談や、自分でもいろいろ試しましたが、ケージの扉ががスライドドア(引き戸)になっている爬虫類用ケージが第一候補になります。
レイアウトに必要な条件を満たしているだけでなく、夏は通気性、冬はサーモスタットやヒーターの取り付け穴があるため、一年を通してレイアウトを変更しなくて良いため、ハムスターの行動に影響が起こりにくいこともメリットです。
ペット用品は良い物を出しても、高くて買ってもらえず、生産中止になったり改悪をすることが多いため、理想のケージがあれば早めに手に入れた方が無難です。このページの写真に写っているケージや飼育用品も、今は手に入れられない物があります。
ケージの広さはケージ選びや、市販の商品については用品検索を見てください。
巣箱
睡眠だけでなく、ほとんどの身支度を巣箱の中で行うため、ハムスターの行動とレイアウトの起点になります。
巣箱の位置をケージの角に設置するだけでも安心感が違い、トラブルが解決できたように見える、大切な飼育用品です。
巣箱の中を飼い主からの完全な死角にするために、出入り口がケージの正面から見えないようにし、毎日の世話の時に飼い主の手が届かない位置に設置します。
巣箱の中を見るのは、ケージの大掃除の時だけで、絶対に中は覗かないようにしましょう。
1度でも巣箱の中を覗いたり、物をぶつけたりすると、安全なはずの巣箱ですら危険で、ケージの中が安全だと思わなくなったり、ストレスや脱走などの様々なトラブルの原因になることがあります。
ゴールデンハムスターやジャンガリアンハムスターは、巣箱近くに1週間くらいの餌を溜め、食べる分だけ巣箱に持ち帰ります。
ロボロフスキーハムスターは、少量の餌をほお袋に詰めるだけで、巣箱には餌を溜めることはほとんどありませんが、巣箱の中に食べかすを捨てたままにし、不潔になりやすいです。
餌が傷みやすくなるため、巣箱の近くの空きスペースに餌を溜めてもらう方が良いのですが、ハムスターもその都度取りに行くのが面倒なようで、餌を溜める場所が巣箱の中になりやすいです。
餌を溜めるスペースを考慮して、巣箱は大きめに、通気性が悪くならないようにしましょう。
このページのレイアウトで、餌をトイレに溜めてしまうようなら、トイレや巣箱を少しずらして餌を溜めるスペースを作ってあげましょう。
餌を盗られると思っていると、オシッコで臭い付けしている可能性もあるため、反応を見て判断しましょう。
飼育方法だけでなく冷暖房によって適切な巣箱の広さは変わるため、夏は厚紙、冬は段ボール紙を使って手作りしたり、空き箱を利用しましょう。
材質が紙だと、自分で穴を開けて温度を調節し、少しなら溜まった湿気も吸い、使い捨てできるので便利です。
巣穴暮らしする動物は天井が高いところは落ち着かないので、巣箱の背が高すぎことは問題ですが、低いとトイレの死角に利用できません。
ハムスターが巣箱の上に登れてしまう高さだと、中で頭をぶつける可能性があり、中に持ち込んだ巣材の量によっても、必要な高さが変わります。
最適なサイズが分からない場合は、「新聞紙を使った巣箱の作り方」を見て試作品を作ってみましょう。
トイレ
巣箱と回し車を利用して、トイレを死角にしてしまう。
人間や環境を怖がって巣箱に閉じこもったり、縄張りを主張するために、オシッコを使って臭い付けすることがあるため、トラブルが目立つ場所です。
ゴールデンハムスターとジャンガリアンハムスターは、基本通りに設置するとすぐに使ってくれるため、少し慣れた飼い主ならトイレに困ることは少ないです。
ロボロフスキーハムスターとチャイニーズハムスターは、回し車でオシッコしますが、使う回数が少ないだけでトイレでもオシッコをします。
排泄中は隙ができ、最も飼い主に干渉されたくない行動と場所になるため、ケージの最も遠いところにトイレを設置します。
寝床の近くでオシッコをする習性があるため、巣箱の近くに設置します。
具体的にはケージの左奥で、すぐ手前に巣箱を置き、巣箱と回し車の陰で飼い主から見えないように設置します。
出入り口が2方向にあるトイレや、三角形のトイレを使用すると、回し車の後ろのトンネルと道を繋げやすく便利です。
三角形のトイレだと、天井部分に隙間が空いてしまいますが、トイレの場所が死角になっていると気にならないようです。
逆にトイレを巣箱にピッタリくっつけたり、屋根で塞いでしまうと、オシッコの臭いや水分が籠もり、巣箱まで不潔になります。
左奥に置いたトイレを使ってくれない場合は、巣穴の入り口になる右奥にトイレ(見取り図の砂浴び場の位置)を設置します。
ベテラン飼い主は、空きスペースを埋めるためや、砂浴び場の代わりに、余ったトイレをこの位置に置くことがあります。
巣穴の入り口になるため、ここに置く場合も三角や出入り口が2つあるトイレが良いです。
寒くなったり、病気になると、遠くのトイレまで歩くことが苦痛になり、巣箱でオシッコをするようになることもあり、この位置のトイレを使うことは、習性としておかしいので、巣箱を広くするなど原因を解決してあげましょう。
トイレ砂を交換するときには、ケージの奥まで腕を入れる必要がありますが、この時も右側の扉を利用します。左を開けてしまうと、左の扉からでも出入りでき、ケージの左側を安全な縄張りと考えなくなることがあります。
巣箱を動かしたり、トイレを巣箱にぶつけたりすると、巣箱を安全だと思わなくなるため、ケージの高さや掃除の姿勢にも気をつけましょう。
ハムスターは汚れることを嫌うため、トイレが綺麗になったことが分かると、トイレ掃除を普通は怖がったりしません。
どうしても手が届かない場合は、ハムスターがコミュニケーションエリアでオヤツを食べている間に、素早く掃除しましょう。
回し車
ハムスターの飼育用品で一番背の高い物が回し車で、ケージの高さ決める基準になります。
回し車を走ることで行動圏を移動している気持ちになるため、回し車を使った行動は比較的分かりやすく、体の大きさにあった回し車を用意すると、怪我を防げるだけでなく、考えていることや体調の変化を発見しやすくなります。
壁際はハムスターの通り道として利用しやすため、壁際に回し車を配置すると縄張りを分断してしまいます。
また、回し車を正面に向けて設置すると、回し車の後ろが飼い主から最も隠れやすくなるため、飼育環境が悪いと回し車の後ろを、寝床やトイレして利用してしまいます。
その習性を利用し、回し車をケージの壁から離し、回し車を壁しても利用することで解決します。
回し車は巣箱など縄張りに使う飼育用品と違って、飼い主から見えることも大切ですが、事故を起こしやすい飼育用品なので、回し車を走っている最中に急に動くなどをして驚かさないようにしましょう。
市販品の回し車の支柱込みの高さなどは、用品検索のページにまとめています。
回し車を走りすぎると死ぬ
野生では食べる物が足りなくなると、より遠くの餌場を探して食べ物を採取する必要があります。その本能は残っていて、餌の量や必要な栄養が足りなくなると、日に日に回し車を走る距離が増え、最後は飢え死にするらしいです。
怪我や手術跡の外傷の痛みは理解できるようですが、内臓の痛みは理解できず、痛みから逃げようとしたり、パニックになって、回し車やケージの中を走ることもあります。
元気だと思っていても、突然亡くなったように見えてしまうため、どんなときに走っているかくらいは覚えておきましょう。
回し車を本気で走るのは、迎えてから1ヶ月くらいの、走れることがうれしい時期くらいです。
トンネル
ケージの後ろから撮影。トンネルの長さが足りないときは粘着力の低いマスキングテープで外をだけを繋げ、テープが剥がれても毛に付かないようにする。
巣箱やトイレの設置方法が悪いと、回し車の後ろに隠れたり、オシッコをするトラブルも多いと思います。回し車を走っている姿を飼い主から見やすいように設置すると、飼い主から隠れやすいからです。
回し車の後ろにトンネルを置くことで、さらに隠れやすいように巣穴の入り口から寝床までの通路を作ります。
作り方は簡単で、回し車の後ろとケージ壁との隙間にトンネルになる筒を置くだけです。
元々は、ハムスターが回し車を走ったときの振動で、回し車が倒れたり、移動してケージに傷が入ったり、ホイールが引っかかって転倒する事故を防ぐために、回し車の後ろにトイレットペーパーの芯を置いたことがきっかけです。
そのトイレットペーパーの芯を通り、ケージの広さを有効に使うようになったため、その習性を利用して巣穴の寝床までの通路にしました。
トンネルは巣箱にたどり着くための安全な道で、ほお袋に餌を入れたまま猛スピードで走り抜けることもあるため、ヒゲやマツゲ(目の上に生えたヒゲ)などの感覚毛が壁に擦れるが、体がギリギリ擦れないくらいの、少し太めトンネルが良いです。縄張りの中で汚れやすいため、歩きながらの臭い付けや、臭腺の位置は気にしなくても良いです。
馴れていないうちは、天敵が巣穴の中まで追いかけてこないと感じてもらうために、少し細いトンネルの方が良いですが、中で詰まったりせず、慌てても通り抜けられるくらいの余裕が必要です。
キャベツなどほお袋に入りきらない物を、引きずって巣箱に持ち込めなくなるため、必要以上に食べ物に執着しないように育てましょう。
大きめのキャベツを与えても、ちぎって持って帰るか、食べたいときに行動圏に出てくるため、習性的には困ることはありません。
巣箱が暑いときは、トンネルで寝ることもあるため注意しましょう。
トンネルの床が滑って歩きにくかったり、汚れても交換するトンネルがない場合は、底になる部分を切ってコの字形にして、床がウッドチップになるようにしましょう。
加工してしまうと強度が弱くなるため、目隠し用の囲い程度に考え利用しましょう。
空き箱を使ったトンネル選び
空き箱を利用すると、衛生的で経済的です。
丸い穴を通ることに適した体格をしていますが、まずは形状にこだわらず適した物を使いましょう。
左:ゴールデン、メス、生後3ヶ月、細め。右:ジャンガリアン、メス、生後5ヶ月、太め。両ハムスターとも冬毛に換毛中でやや大きく見える。
- 牛乳パック(ジュースのパック)など紙パックは簡単な拭き掃除くらいできますが、水分を通さないため湿気が籠もりやすく、汚れも弾いて吸い取ってくれません。すぐにカビが生えるため、綺麗に洗ってから使いましょう。牛乳パックはゴールデンハムスターでも少し太いですが、ほお袋に物を入れると丁度くらいです。
- ポテトチップスが直接箱に入っている商品があり、臭いやカスが残るため、中袋入りの物を選びましょう。転がらなければ頑丈な筒です。
- クッキーなどのお菓子の箱は、紙が薄いため汚れてボロボロになりますが、箱の種類も多く加工しやすいです。
- トイレットペーパーやラップの芯は、ロボロフスキーハムスターにも少し細いため、巣穴のトンネルではなく空きスペースの岩陰(隠れ場所)として利用しましょう。当たり前ですが、ラップの芯より外箱の方が太いです。
- ティッシュペーパーの箱はそのまでは大きすぎますが、加工しやすいため切ったり貼ったりして、長さや幅を調節しましょう。ハムスターの毛は接着剤や粘着テープに付きやすいため、接着面には注意しましょう。
- ガラスやプラスチックも壁として認識してくれますが、囓ると危ないだけでなく、明るさを感じ換毛にも影響するため、透過(透明で光が通る)する物は使用しないようにしましょう。
危ないトンネル
市販のケージセットのトンネルやパイプは、掃除が面倒なだけでなく危険です。
体の成長だけでなく、ほお袋の中身や、夏と冬とでも体型や習性が変わるため、トンネルに必要な太さが一定ではありません。
野生ではハムスターが掘るだけではなく、体が擦れると巣穴が少しずつ壊れ、体に合わせて広くなるため、巣穴で詰まって動けなくなるとは思わず、無理に通り抜けようとします。
怯えると、狭く深い場所に潜ろうとし、首元までほお袋があるため、狭いと中で窒息する可能性があります。私は初心者の頃、木製の迷路を使ったことがありますが、目が飛び出そうなくらいもがき苦しみ、ノコギリで迷路を切って救出したことがあります。
そのため、ハムスター自身が簡単に壊せ、緊急時に飼い主がとっさに外せ、中で折れ曲がっていたりせず、真っ直ぐな紙の筒を、状態に合わせて使い分けましょう。
繁殖などで集団飼育する場合は、中ですれ違えるくらいのサイズは必須ですが、中で喧嘩になると手が付けられないため、トンネルを使わなくても良い様に、レイアウトを工夫しましょう。
餌入れ・野菜入れ・給水器
手前の空きスペースが大切です。
餌入れ、野菜入れ、給水器はケージの扉付近に設置します。
野菜入れが左なのは、餌入れと並べてもちぎりやすい方向が多くなり、毎日取り替えないため他の物より奥に置くためです。
その右に餌入れを置きます。こちらは世話の時に、小さい餌をこぼさないように利き腕側に設置します。
餌入れ形状で食べられる向きが決まっている場合は、奥から手前を向いて餌を口に入れられるようにします。
給水器は、基本的に床に置くタイプをケージの壁際に設置します。
私は手荒に扱っても良い様にアクリル板で専用のスタンドを作っていますが、空のペットボトルでも作れます。
病気になると低い方が飲みやすいこともありますが、個体によって飲みやすい高さが違ったり、自分でウッドチップを掘って高さを調節する個体もいるため、意外と給水器の高さの調整は難しいです。
給水器を倒してしまう個体は、天井からモールや針金を使って吊り下げます。
飲みやすい高さが分かるまで、高さを調節しやすい吊り下げ型が良いかもしれません。
ゴールデンハムスターは、吊り下げた給水器を叩いたりケージとぶつけた音で、飼い主を呼ぶ個体もいますが、それだけ簡単に動いてしまい飲みにくいということでもあります。
この3つは、手前に置き過ぎると世話がしにくいため、ケージの扉より少し奥に設置します。
ケージとの隙間が無駄に思えるかもしれませんが、この隙間が「コミュニケーションエリア」になります。
飼い主がハムスターを呼ぶ場合は、コミュニケーションエリアのケージの縁を指でトントンと叩いて、音を使って呼びます。
扉付近に背が高い物を置くと、世話の時にぶつけやすいため注意しましょう。
ハムスターにぶつけないように気をつけていても、うっかりケージにぶつけて落としてしまうことがあります。
砂浴び場
この個体は砂浴びにはほぼ利用せず、オヤツはその場で、ペレットやミックスフードは砂浴び場で食べます。ゴミが出なくて良い感じ。
ハムスターに触らないように飼育している場合は、ウッドチップの上を歩いたり毛繕いだけで体を清潔に保てるため、砂浴び場は必須ではありませんが、病気になると必要になることもあるためスペースの確保は必要です。
巣穴に汚れや臭いを持ち込まない様に、縄張りと行動圏の中間になる巣穴の入り口付近に設置します。天井や壁に囲まれ巣穴にすぐに逃げ込めるため、臆病な個体ほど、砂浴び場にいる時間が長くなります。
砂浴び場は高さがないと、砂がこぼれてしまうため床と段差ができてしまいます。巣穴のトンネルと繋げるのなら、背の低い三角のトイレが無難です。
皮膚炎などで必ず通ってもらいたいときは、トンネル状になった背の低い砂浴び場を利用し、巣穴のトンネルと繋げ交換回数を増やします。
砂浴び場はハムスターにとって快適なことが多いため、砂浴び場で飼い主が来るのを待っていたり、様子を見ている個体なら、出入り口を飼い主の方向に向けるのも良いです。
基本的に行動圏に設置する物なので、慣れていて病気で無いのなら、ケージの中の空きスペースに設置しても問題になることは少ないです。
巣箱の出口
慣れたと思ったら、巣箱の右奥に穴を開けるか、回し車と巣箱の隙間から出られるように、巣穴の2つ目の出入り口を作ります。
餌場までのショートカット用の出口で、巣箱の換気口としても使い、ハムスターが自分で温度の微調整します。
天敵が入って来られないように小さく狭く遠い方を入り口にして、大きく出やすい方を出口に利用します。
体格やほお袋に入れる餌の量、巣箱の温度にも影響しますが、入り口はギリギリ入れる大きさ、出口は入り口より少し大きめに穴を開けます。紙で作った巣箱だと、自分で囓って調整することもあるため、穴の大きさや位置は、ハムスターや環境に合わせて調節しましょう。
大きい餌や巣材を持って帰ったり、回し車でオシッコをするためにロボロフスキーハムスターが、出口から入ることはありますが、あくまでも出口で本能的に入り口として利用しません。
出口を入り口として利用する場合は、急いで帰る理由や、遠回りできない理由が無いか探しましょう。
ストーンベッドで補強する
大きめのストーンベッドを置いて、回し車の振動や転倒防止、回し車の高さ調整、巣箱の移動防止の3つの役割を持たせている。
ストーンベッドは、大理石や御影石を使った石の板のことで、夏に使う放熱板として売られています。
ハムスターが本能的に理解できる「石」なので、トラブルが少なく様々な目的に利用でき、消耗品でもないため数枚持っていると便利です。
大きいストーンベッドで2つ以上役割を持たせたり、小さいストーンベッドを並べたり積み重ねたり、環境に合わせて工夫しましょう。
高さの調整
飼育用品の高さが揃わないときに、底上げに使います。
ウッドチップはハムスターが歩くだけで平らになってしまうため、ウッドチップの節約もできます。
餌入れが背が高く使いづらそうにしているのなら、横に置いて餌入れをウッドチップに埋めて高さを調節します。病気になったときに特に困ります。
給水器の前や下に置いて、高さを調節すると、少量の水がこぼれてもウッドチップが湿らないようにもできます。
巣箱のズレ防止
巣箱の横に置いてケージの壁と挟むと、巣箱がずれず、出入り口にわずかに段差ができるため、穴に潜るように巣箱に入れるため少し安心します。
巣箱の上にストーンベッドを重しとして置くと、巣箱が動きにくくなりますが、巣箱が狭いなどの巣箱の中での不満が分かりづらくなります。
回し車の振動と転倒防止
回し車の後ろに置いたトンネルでも振動やズレは防止できますが、回し車の支柱にストーンベッドを重しとして置くと、さらにズレや転倒防止になります。
支柱の上にストーンベッドを置くと、回し車の前に坂ができて、床とホイールまでの高さが低くなります。
支柱の形状が原因で重しにできない場合は、支柱を囲むように置きましょう。
置き型の給水器の横に置けば転倒防止になります。
コミュニケーションエリア付近
餌入れやオヤツを与える場所に敷くと、餌を落としても無くしたりしなくなります。慣れないうちは、ミルワームを落とす個体もいます。
集団飼育していると、落とした餌が見つからないと他の個体に盗られたと思い、喧嘩になることも防げます。
汚れやすい場所なので、餌を与えるついでに掃除もできます。
空きスペースと隙間は?
ハムスター目線で見ると、回し車下部の隙間は意外と大きい。
縄張りと行動圏から外れたケージの中の空きスペースは、飼い主から見ればデッドスペースに、ハムスターから見れば丸見えの危険な場所なります。
時々、臭い付けや安全確認のために歩く程度で、ハムスターは利用してくれません。
飼育に必要のない物を置くと、登ったり囓ったりと事故の原因になるため、理由が無いのなら空きスペースにしたままの方が安全です。
巣箱や回し車が小さいときは、大きい物に変更しましょう。縄張りが広く安全になり、飼い主からの死角を作るためにも有効です。
行動圏に広くスペースが空いてるのなら、牛乳パックなどぶつかっても安全な物で、餌入れまで隠れて通れるトンネルを作りましょう。
縄張りになる場所は、規格の無い物を組み合わせるため隙間ができてしまいます。
回し車のホイールは丸いため、下部の両脇に隙間が開いてしまい、その隙間が巣穴の途中の抜け穴になってしまいますが、物を置いて隙間を埋めようとすると事故に繋がるため、回し車を巣箱側に寄せる程度にしましょう。
ハムスターだけを飼っているのなら天敵は人間だけなので、人間の手や指が入らない隙間なら、あまり気にならないようです。
反対にトンネル部分に全く隙間が無く、ハムスターの力で動かせないと、事故が起こっても気づけず、どこにいるのかも分からなくなるため、一体物にしないようにしましょう。
縄張りと行動圏でのトラブルと行動
このページの記事を理解しレイアウトできると、行動の理由が分かりやすくなります。左が安全で右が危険と考えるだけでも、原因を発見しやすくなります。
フォーラムの相談でよくある行動を掲載しています。一般的なトラブルは他のページにもまとめてあります。
縄張りの中で噛んだり掘ったりする
巣箱や巣穴が快適ではない。
巣箱の隅っこやケージの隅っこなど、ケージの左側を掘ることが多いです。
狭い、飼い主から逃げたいなど、深く掘ってさらに安全な場所を作ろうとしています。
普段は問題なくても、工事の音や振動、騒がしい友達が来たりと、寝不足の原因があると突然起こることもあります。
行動圏で噛んだり掘ったりする
ケージから脱走しようと、ケージの扉付近を囓ったり、壊しやすい所を噛みます。
給水器の取り付け穴や、空気の流れがあったり、鼻や前足が出せる程度の穴でも、外と繋がっていると考えます。
散歩中にオヤツを見つけたり、ケージに外に気になる音や臭いがあると、その場所に最短でたどり着ける位置や、飼い主に見つかりにくい位置に穴を開けようとします。
コミュニケーションエリア付近を囓る
レールの材質がプラスチックのケージを10年以上使っても、ジャンガリアンハムスターならこの程度の囓り跡。
オヤツや散歩など、飼い主に要求があると、待ちきれずにケージの出口付近を囓ることがあります。
ハムスターが飼い主の行動パターンを理解する期間より、飼い主を怖がらなくなる期間が短いと起こります。その場合は、感覚器官の多いハムスターの顔の近くを軽く触り、まず飼い主が気づいていることを理解させてます。そして袋を開ける音をさせながらヒマワリの種を出して渡すなど、少し待たせて相手をしましょう。それをくり返すと、慌てても結果は変わらないと理解し、長時間待たされてもイライラしなくなります。
世話の時間とハムスターの活動時間が合ってないことが原因の場合は、なるべくハムスターに合わせましょう。
人間を怖がらない個体や、ベテラン飼い主にも起こりやすいですが、縄張りを認識させない飼い方、自分の要求を我慢できない幼い個体、甘やかしすぎても起こります。ハムスターの要求が強く出ているだけで、まだまだ馴れ(慣れ)ているとは言えない状態です。
体が弱ってきたときに、普段与えていない食べ物を要求したり、要求する回数が減ることがあるため、表情や行動で判断できるようになりましょう。
給水器の前を掘る
給水器の高さが低い場合、自分でウッドチップを掘って飲みやすい高さを調整することがあります。
ウッドチップを掘ってもあまり高さが変わらないため、ロボロフスキーハムスターなど体の小さい個体が掘ることが多いです。
喉や首に病気があると、水が飲みづらくなるため、適切な高さを覚えておき調整しましょう。
給水器を動かして音をさせる
コミュニケーションエリアでハムスターが行動しているときに、吊り下げた給水器が体に当たりケージとぶつかった音に飼い主が気づくと、給水器を揺さぶると飼い主が来ると覚えるようです。
中には紐の付いた鈴を引っ張って、飼い主を呼ぶ頭の良い個体もいます。
何かある度、相手をしているとワガママになったり、無視をしていると飼い主を呼ばなくなったりと加減が難しいため、習慣づけない方が良いこともあります。
我が家では散歩の合図になっています。
トイレやコミュニケーションエリアにゴミを捨てる
オヤツになる物は持ち帰らず、その場で食べられるようになれば掃除も楽になります。
傷んだ餌や、固まったトイレ砂、汚れたウッドチップなど、不要な物を飼い主に捨ててもらうために、定期的に掃除するトイレや、飼い主に一番近いコミュニケーションエリア付近まで、運んでくることがあります。
タイミングが良いと、手渡ししてくれることもあります。
コミュニケーションエリアでオヤツを与える理由は、この辺りでゴミを捨てても、飼い主が片付けてくれると考えてもらうためでもあります。
前日に与えた種の殻が落ちている場合は、オヤツを食べているときに、目の前でケージから取り出すと、覚えてくれやすくなります。ヒマワリやカボチャの種の殻は後で食べるため、間違って捨てないようにしましょう。
トイレに餌を置いて、餌を盗られないようにオシッコで臭い付けしていることもあるため、注意しましょう。
巣穴の入り口側のトイレに捨てている場合は、砂浴び場に変えて、本当に捨てているのか置いているだけなのか、確認した方が良いです。
トイレや給水器の近くを掘る
硬くて穴が掘れないときは、湿った場所を掘って広げようとしています。舐めたりオシッコをして、自分で湿らせてから掘ることもあります。
ガラス製のケージなど壊せない物や、囓れない平らな場所を舐めているときも、穴を開けようとする行動です。
巣箱の出入り口に蓋をする
寒くなると、行動圏側の巣箱の出口を閉じることがあります。暑いときや巣箱の外に出るときだけ開けて、自分で温度の微調整しているのなら問題ありません。
冬に閉じない場合は、ヒーターが暑すぎたり、巣箱より巣箱の外の方が適温に近いことがあります。
すきま風や騒音にも気をつけましょう。
縄張り側の巣箱の入り口を、閉じてしまうと問題です。当然、両方閉じているともっとダメです。
ケージ全体を安全だと思っていなかったり、巣箱の温度が低すぎたり、巣箱と巣箱の外の温度が差が激しいなどが原因で、完全な閉鎖空間を作り引きこもろうとしています。
ウッドチップだけでなく、ペレットなどの餌を積んで蓋をすることもあります。
飼育環境が悪い証拠なので、改善してあげましょう。
保温方法に関してはヒーターの設置を参考にしてください。
餌入れの下や近くを掘る・散らかす
餌場にある物から、さらに何か採取できないか、自分が餌を落としていないか考えています。
ミルワームはハムスターのこぼした餌を食べるため、ハムスターが落としたミルワームが餌入れの下に隠れることが多く、ミルワーム(タンパク質や脂肪)を欲しがっていることもあります。
注意しなければならないことは、人間が餌を持ってくることを理解しながら、自分で探していることです。
飼い主が相手をしてくれない時間だから、自分で探しているだけなら良いのですが、飼い主からは得られない栄養を求めていることもあります。単にワガママになっていることもありますが、この行動を見ることが多いなら、餌の栄養を疑いましょう。
陶器の餌入れなど、ハムスターが簡単に動かせない容器なら、餌入れの中に入って餌を散らかすこともあります。
寝る場所と起きる時間
オヤツを待ちきれず、給水器とケージの隙間に挟まって眠っていました。
毎日の世話の時間が決まっていると、オヤツを待ちきれず、コミュニケーションエリア近くに作った仮眠所で待っていたり、巣箱の中で準備しているため動いている音が聞こえることもあります。
与えた栄養では足りず、腹が減ってぐっすり眠れないため、いつもより早く起きたり寝付きが悪かったり、病気が原因ですぐに起きられず、あくびしながら出てきたりなど、長く飼育していると様々な小さい行動の変化が起こります。
その原因が、油断しているのか、温度なのか、昨日の世話の影響なのかなどを判断し、飼育方法を改善することが大切で、病気の早期発見にも繋がります。
飼い主が家に居ない間に、家の近くで工事があったり、家族が勝手にオヤツを与えたことを、ハムスターの様子で分かるくらいになりましょう。
回し車を走る方向
きっちり巣の中と外の区別ができると、回し車を走る方向が決まってきます。
餌が欲しい、散歩がしたいときなど、巣の外に目的があると、右向きに走ります。
餌をもらってうれしく早く帰りたい、もうそろそろ眠いときは、巣穴に次の目的があると、左向きに走ります。
慣れてしまうと、左を向いて走るのはオヤツをもらった後のロボロフスキーハムスターくらいで、飼い主が居るときはほぼ右に向いて走ります。
病気になるとネガティブな思考になり、走る速度や向きが変わることがあるため、健康なときの行動は覚えておきましょう。
「オヤツが欲しいなぁ~」「散歩したいなぁ~」と考えているときは、飼い主を横目で捜しながらゆっくり回し車を走り、飼い主の気配に気づくと立ち止まり、飼い主が気づいてくれたと思うと、回し車を飛び降りて走ってきます。
回し車の前に物を置いていると、飼い主に驚いて転倒して落下したり、オヤツをもらおうと慌てて飼い主に向かってくる個体もいるため、回し車とケージの扉の間には、なるべく物を置かない方が良いです。
ちなみに走ると落ち着くため、転位行動として本能的に走っているときは、飼い主に気づいても無視したり、めんどくさそうな顔をするため、無理にかまって嫌われたり、変な癖を付けないようにしましょう。
ロボロフスキーが回し車でオシッコをするときは、寝床から離れようとするため寝床の反対方向にゆっくり歩き、ある程度歩くと反転してからオシッコをして、回し車を走らず寝床に帰ります。
特にロボロフスキーはオヤツをもらっただけでも、凄い速度で走ることがあります。
さらに改善したい場合
ウッドチップを敷いて完成したジャンガリアンハムスター用のレイアウトですが、見取り図と全く同じではありません。
ケージのレイアウトの目的は、懐きやすさはもちろん、習性や本能を満たしつつ、できるだけ少ないスペースで、簡素(ストレスが少ない)に世話し、金銭的なコストも減らし、トラブルや病気の兆候も発見しやすくすることです。
良い方法を思いついたようでも、過去に誰かが検証済で良い結果が得られないことがほとんどです。相談でよく見るパターンを掲載しているので、自分でレイアウトをアレンジするときに注意してみましょう。
初心者は、ハムスターの様子を観察しようと、巣箱などの飼育用品を飼い主から中が見えやすい物を選んで、ケージの奥や内周に並べてしまいます。
初心者用の飼育セットは、安く広く見せようとしているため、ほとんどがこのパターンです。
少し飼い方に慣れてくると、トラブルの対処のためケージを広くしようとしますが、水槽や衣装ケースなどを使い、ハムスターが隠れる場所を無くしてしまいます。
目で見えるトラブルを、生態に合わない方法で解決しようとしてしまいがちです。
少し知識に余裕ができると、野生環境を飼育に取り込もうと、土やトンネル(迷路など)を利用しようとします。
ケージの中に本格的な巣穴を作ろうとしても、ハムスター自身が土を掘って拡張したり、土に住む細菌の助けが必要で、個人の飼育環境で作ることは現実的ではありません。行動圏の再現まで含むと絶望的です。
トンネルに関しては記事に書いているとおりです。
無理に野生に近づけようとしたり、綺麗に見せようとして、基本的なことを忘れがちです。そもそもハムスターは見られることが嫌がります。
世話が少なくて済む飼育環境は、それだけ縄張りを荒らされない安心できる環境でもあります。
面倒なのは、飢えることを極端に心配し、病気ですら発見しづらい我慢強い動物なので、環境に慣れる(麻痺する)と、さらに分かりにくくなることです。
餌に釣られて(餌付け)しまったり、使い慣れた巣に固執してしまうなど、時間が経つとトラブルが直ったように見えてしまい、性格の問題だっと思いがちです。
飼い主を怖がる以外は、迎えた日から一生トラブルを起こさない環境が良い飼育環境で、前のハムスターは大丈夫だったのにと思ったら、間違ってたということです。
しかし本当に性格が問題していることもあり、さらにトラウマや体質を含めると、飼育経験が多くても判断が難しいのも確かで、私も個体に合わせてレイアウトを調整することがあります。
行動の理由が分かってくると施設を設置して、それをハムスターが利用したり発展させるシムシティ(TVゲーム)の様になり、より高い目標ができます。
残念ながら生産する物は良質なウンコくらいですが、心まで健康でないと良い便も出ませんよ!
この記事を執筆した時点で飼育歴22年目、飼育頭数73匹、飼育相談は数知れず、それでもまだ改良したい所があり、記事の公開を渋っていたくらいです。
他のケージで似たレイアウトを試そうと試行錯誤した記事はフォーラムに、そのページの一部は記事下のリンク集にあります。もっと読みたいのならフォーラムか記事検索から探してみてください。
トイレや餌の問題が巣箱で解決したり、病気のハムスターに合わせてレイアウトを変更した事例などあります。
良いアイデアがあれば、フォーラムに投稿してみてください。