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野生のハムスターに関する先行文献 3

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野生のハムスターに関する先行文献 3


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また長くなったので、新たにトピックを立てさせて頂きました。
今日は、イスラエル・アハロ二(Israel Aharoni)氏の『ゴールデンハムスター(Golden Hamster)』をネットで検索してみましたが、引用しか見つかりませんでした。 新知見ではありませんが、一応、スミソニアン博物館の記事を要約して紹介します。

引用:

1930年4月12日、幸運が訪れた。一連の会話を通じて、男たちは動物が目撃された農場を見つけた。アハロニと、彼の旅を手伝ったゲオリウス・カリル・タハンという地元の猟師、そして地元の首長が集めた数人は、農夫の後を追って彼の畑に向かった。タハンと何人かの村人たちは、若い緑の小麦の茎の上に積み上げられた土を狼狽して見つめている農夫を顧みず、興奮して熱心に掘り始めた。
彼らは8フィート(約2.3m)掘って、巣の中にいるハムスターを見つけた。ハムスターは金色で、毛皮で覆われていて、小さかった。アハロニは、若い母親と子どもを農場から連れ出し、エルサレムの彼の研究室に連れて帰ることにした。
麦畑では、母親が箱に入れられると、子どもを食べ始めた。アハロニは、母親が最も近くにいた子どもの頭を醜い残酷さで切断するのを見た。タハンは、母親がこれ以上子どもを食べないように、シアン化物の瓶に入れて殺した。母親を殺すことは、子どもだけで食べていくには小さ過ぎたため、軽率だったのかも知れない。11匹のハムスターは、エルサレムに戻った時には9匹となり、彼らの目はまだ閉じていた。
子どもたちはスポイト(のミルク)で育てられ、しばらくの間はうまくいっていたが、ある夜、5匹のハムスターが木製のケージを噛んで脱走し、そのまま見つからなかった。ハムスターの世話をしていたアハロニの同僚、ハイン・ベン・メナチェンは、この事件に圧倒された。
残った4匹のハムスターのうち、1匹のオスがメスを食べたので、メスが2匹、オスが1匹の、3匹だけになった。ベン・メナチェンは決意を固め、ハムスターが繁殖するための、干し草を敷き詰めた特別な部屋を作った。彼は部屋に1匹のメスを入れ、彼女が干し草の中に静かな場所を見つけた後、唯一のオスを引き合わせた。彼らによって150匹の子孫が生まれた。

また、マイケル・ロス・マーフィー(Michael R.Murphy)氏の寄稿「シリアゴールデンハムスターの捕獲と家畜化の歴史」が掲載されているハロルド I.シーゲル(Harold I.Siegel)編『ハムスター: 繁殖と行動(The Hamster: Reproduction and Behavior)』は、ネット上では閲覧フリーではありませんでした。
マルコム・ピーカー(Malcolm Peaker)氏(英国王立協会及びエジンバラ王立協会の研究員、グラスゴー大学ハンナ研究所の所長及び教授、ロンドン動物学会の副会長等)のブログで、マーフィー氏の寄稿が引用されていましたので、ひとまず以下に紹介します。

引用:

妻のジャネットと私は、自分の好奇心を満たし、比較研究のために野生のハムスターを手に入れるべく、1971年の5月から6月にかけて、シリアのアレッポへの偵察遠征を行った。全部で13匹の野生のハムスターが捕獲され、そのうち12匹(オス4匹とメス8匹)をアメリカに連れ帰った。
私がシリアで捕獲した動物の子孫は、メリーランド州ベセスダの国立衛生研究所のアンドリュー・ルイスによって維持されている。また、1978年、テキサス州ダラスのサウスウェスタン医科大学のビル・ダンカンは、生きた野生のハムスターの捕獲を行い、2匹のメスを米国に持ち帰った。

上記『ハムスター: 繁殖と行動』、及びマーフィー氏の探索旅行に随行した婦人(Janet E.Murphy)の紀行録”Hunting Wild Hamsters”は入手可能でしたので、2冊合わせて注文しました。海外からの発送で、いつ届くかは分かりませんが、到着し次第、コツコツと翻訳して行きたいと思います。

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Re: 野生のハムスターに関する先行文献 3


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引用:

母親がこれ以上子どもを食べないように、シアン化物の瓶に入れて殺した。

こういう発想をして実行してしまう人に、行動を正確に解析できるのかが疑問ですよね。

引用:

11匹のハムスターは、エルサレムに戻った時には9匹となり

野生個体の産仔数(産子数)が知りたいですけど、文献とかないでしょうか?
私が飼っていたゴールデンハムスター(キンクマ)で12匹でしたが、栄養状態が良くストレスも少ないはずのペットなのに、産子数が実験動物くらい(6匹程度)少ない理由が、カラーブリーディングだとは思うんですけどね。

「山登魚」さんの引用:

上記『ハムスター: 繁殖と行動』

こっちの話は、昔の飼育書にも引用されていました。

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Re: 野生のハムスターに関する先行文献 3


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「管理者」さんの引用:

こういう発想をして実行してしまう人に、行動を正確に解析できるのかが疑問ですよね。

アハロニ氏は、ゴールデンハムスターの生態については知らなかったとしても、近縁の他種の動物には詳しかった筈ですから、母親が脅威を感じ、子食いした原因が自分たちにあることを教えて、タハン氏の行為を止めてもらいたかったです。

「管理者」さんの引用:

野生個体の産仔数(産子数)が知りたいですけど、文献とかないでしょうか?

今までに捕獲された野生のゴールデンハムスターのうち、1932年にアハロニ氏によって捕獲された12匹のうちの11匹と、1999年にガッターマン氏の研究チームによって捕獲された13匹のうち3匹が子ども(オス30g 、メス23g、メス29g)だった他、1匹のメス(114g)が妊娠しており、後に6匹の子どもを出産しています。
3匹の子どもは同じ1つの巣穴から見つかっていて、全長は900cm(発見された中で最大)、妊娠していたメスの巣穴は全長150cmでした。
野生のゴールデンハムスターのサンプル数自体が少ないのですが、1999年に捕獲された野生のメスは小さかったので子どもの数も少なく、管理者様が育てられたハムスターは大きいので、産仔数も多かったのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
久和茂編『実験動物学 第2版』(朝倉書店2018年3月)によれば、実験室のゴールデンハムスターの産仔数は平均8匹(1〜15匹)なので、いずれもその範囲内ではあります。
先ほど"Hunting Wild Hamsters"が届きましたので、一読の上、また何か見つかりましたら報告します。なお、この著書はマーフィー氏とジャネット夫人の共著であった点を訂正します。

「管理者」さんの引用:

こっちの話は、昔の飼育書にも引用されていました。

日本語で引用されている書籍をお持ちでしたら、それが確実ですね。
私はついに昨日、独和辞典を購入し、隙間時間で独学も始めました。
自動翻訳で不自然な部分は手作業で確認・訂正していて、英語論文は何とか意味が通る程度には和訳できる(?)のですけど、ドイツ語論文が大変過ぎました。
これから大学で動物学を専攻される方は、私のような苦労をしないよう、はじめから第2外国語をドイツ語にすることをお勧めしたいです。

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Re: 野生のハムスターに関する先行文献 3


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「山登魚」さんの引用:

タハン氏の行為を止めてもらいたかったです。

獣医師は飼い主が噛まれて、ケガや病気になった責任がとれないため、飼い主が噛まれるような行動に対しては消極的ですが、野生動物の研究者も未知の病気に対して、獣医師以上に敏感なのかもね。当時から手袋くらいあっただろうけど。
飼い主の立場からすると、自分も噛まれて痛みを共有しろと言いますが。

「山登魚」さんの引用:

管理者様が育てられたハムスターは大きいので、産仔数も多かったのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

わが家の個体は、栄養状態は良く、体が大きいから産子数も多いのは確かですが、実験動物用のペレットより、高カロリーのエサを主食にしているペットが、うちの個体より産子数が少ないのは、カラーブリーディングとストレスかな?とか思ってます。
野生動物だと環境の影響を受けやすいでしょうし、捕獲されたばかりの野生個体なら、栄養状態もストレスも悪いでしょうから、なかなか難しそうですね。

「山登魚」さんの引用:

自動翻訳で不自然な部分は手作業で確認・訂正していて

昔はスキャナー使ってOCRで読み込んで誤字を手作業で修正して、数種類の有料翻訳ソフト使い分けてました。
今はAIと無料ソフト使って短時間でできますが、今も昔も知識と時間がないと、正確に理解できないですもんね。
苦労は理解できます。ホント、ご苦労様です。

「山登魚」さんの引用:

はじめから第2外国語をドイツ語にすることをお勧めしたいです。

私は外国語を諦め、ハムスター語に専念しています。
最初は肉体言語(噛まれる)でしたが、体で覚えたことは無意識に反応できる様になってます。

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Re: 野生のハムスターに関する先行文献 3


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「管理者」さんの引用:

野生動物の研究者も未知の病気に対して、獣医師以上に敏感なのかもね。

以前の引用で説明が足りなかったかも知れませんが、母親を殺したタハン氏は現地のガイドで、専門知識はありませんでした。
ジャネット E.マーフィー氏の著書には、ハムスターの捕獲用に仕掛けたシャーマントラップにハリネズミが掛かり、アレッポ大学の飼育係に届けたところ、すぐにホルマリンの入った瓶に入れて溺死させて衝撃を受けたという記述がありました。当時の現地のやり方としては、よくあることだったのかも知れません。
とはいえ、アハロニ氏もハムスターの生態について、かなり不正確な捉え方をしていたようです。これについては後述します。

「管理者」さんの引用:

実験動物用のペレットより、高カロリーのエサを主食にしているペットが、うちの個体より産子数が少ないのは、カラーブリーディングとストレスかな?とか思ってます。

マーフィー氏の論文を読むと、その予想は的確かも知れないと思いました。これについても後述します。

「管理者」さんの引用:

昔はスキャナー使ってOCRで読み込んで誤字を手作業で修正して、数種類の有料翻訳ソフト使い分けてました。

全く、昔のスキャナーも翻訳ソフトも、訂正するより自力でやったほうが早いレベルでした。
ジャンガリアン・キャンベル・ロボロフスキーハムスターに関する論文は、ラテン語、ドイツ語、ロシア語等、英語以外のものが多くて、AIの翻訳無しには、私のような素人には、とても到達できない世界だったと思います。

「管理者」さんの引用:

私は外国語を諦め、ハムスター語に専念しています。

ハムスター語、私もいつか習得したいです。先日、別トピックに上げられた新作の給水器スタンドの画像を拡大し、そこで初めてキラキラの目をしたジャンガリアンの子の存在に気付きました!
早速ピッタリの狭い空間を見つけて潜り込み、ご満悦な様に見えますが、合ってますでしょうか。

さて、本題に入る前に最初に訂正します。アハロニ氏が野生のハムスターを捕獲したのは1930年で、1932年は、その記録が書かれた年でした。

引用:

マイケル・R・マーフィー「シリアゴールデンハムスターの捕獲と家畜化の歴史」ハロルド・I・シーゲル編『ハムスター -繁殖と行動-』ラトガース大学心理学部・動物行動研究所 プレナム・プレス 1985年 p.3〜20

ゴールデンハムスターの発見と捕獲の歴史については、ソウル・アドラー氏やイスラエル・アハロニ氏の同僚から直接話を聞いたり、ご家族から写真を譲り受けたりしていて、ジミー・マッケイ氏の飼育書を含め、今まで見たどの情報よりも詳しく書かれていました。
アハロニ氏は、当時の同僚だったアドラー氏の要請に応じ、1930年の探検の際、ハムスターを探すことを決意しました。この活動の回顧録はヘブライ語で書かれていましたが、マーフィー氏は、このうちのハムスターの章を同僚に翻訳してもらい、一読した上で要約を紹介しています。
そのうち、前回触れられていなかった部分だけ、以下に紹介します。

引用:

アレッポ地方に到着すると、アハロニはシリア人のガイド、ゲオルギウス・カリル・タハンに、ある農場へ行き、地元の首長にゴールデンハムスターの居場所を尋ねるよう指示した。1930年4月12日、首長は会議を招集した。
会議では、ハムスターが生息するために選んだ最良の畑の一つで、この生き物を捕獲することが決定された。(中略)
母親が子どもの世話をし、乳を与えてくれるだろうと考えたゲオルギウスは、家族全員をコロニーボックスに入れた。しかし、彼の望みは叶わなかった…。母親(進化レベルが低い生き物だ)が心を閉ざし、最も近くにいた子ども(当時の子どもはそれぞれ2.5cm弱)の頭を(中略)。生まれながらの母性愛が、愛する子どもを殺させる原動力となった。
「呪われた人類の実験の餌食になるよりは、我が子が死ぬ方がましだ」と。

また、アハロニ氏が捕獲したハムスターのうち、最後に生き残った4匹について、アハロニ氏によれば、オス3匹とメス1匹としていて、ジミー・マッケイ氏の飼育書には「これとは矛盾する報告も存在する」とだけ書かれていましたが、マーフィー氏によれば、その矛盾する報告とはアドラー氏の論文(1948)のことで、そこではオス1匹とメス3匹が生き延び、メス1匹は後にオスに殺されたとされているとのことです。書籍や論文によってこのあたりの内容が異なっていたのは、アハロニ氏の記録がヘブライ語で書かれていて、原典に直接当たるのが難しかったことと、論拠が異なっていたからだということが分かりました。
さらに、回顧録には記されていませんが、アハロニ氏は母親と10匹の子ども以外にも多くのシリアハムスターを捕獲していたようで、1930年4月27日と29日に捕獲された3匹のメスの老齢標本が、ベルリン動物学博物館のコレクションに彼のものとして保管されているとのことです(これについてはマッケイ氏の飼育書やガッターマン氏の論文にも記載があります)。
老齢のメスだばかりだったので、繁殖はできなかったようです。

引用:

妻のジャネットと私は、1971年5月から6月にかけてシリアのアレッポへの偵察遠征を行った。
全部で13匹の野生ハムスターが捕獲され、そのうち12匹(オス4匹、メス8匹) をアメリカに連れ帰った 。
この経験から得られた観察結果は今言及する価値がある。私は、シリアのハムスターが実験動物となることに成功したのは、実験室での生活に非常によく適応したためだと考えている。私がシリアで捕獲した野生ハムスターは、わずか3日間扱っただけで、飼い慣らされて穏やかになった。全ての動物が捕獲後4週間以内に交尾し、8匹のメス全てが子孫を産んだ。平均の子どもの数は11匹で、観察や体重測定のために頻繁に邪魔されたにもかかわらず、全ての子どもが離乳まで育てられた。野生のシリアハムスターとその子孫を繁殖させてきた中で、繁殖能力や病気に問題を抱えたことは一度もない。しかし、対照的にトルコハムスターとルーマニアハムスターではかなりの苦労を経験し、最終的に両種のコロニーを失ってしまった。したがって、シリアハムスターはまさに奇跡的な実験動物であるというアハロニ氏の意見に賛同する傾向にある。
野生型はもともと実験室に非常に適していたため、特に行動に関しては、シリアハムスターは野生型からほとんど変化していないと考えている。
また、進化論の観点から見ると、希少で知られていないシリアハムスターは、実験動物となったことで大きな適応放散を遂げたとも言える。医学および行動学の研究が続けられる限り、たとえ野生では絶滅したとしても、実験室では絶滅することはないだろう。

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いつも以上に長文です


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引用:

ジャネット E.マーフィー『野生のハムスターの捕獲』サンフェイス・デザイン 2024年

上記の著書は、マイケル R.マーフィー氏と共に、イギリス・レバノン・シリアを訪れた際の詳細な旅行記で、滞在したホテルや料理、観光地、出会った人々との交流等、読んでいるこちらまで追体験できるような、いきいきとした内容でした。共著という体裁になっていますが、マイケル R.マーフィー氏が亡くなった(2018年)後に発行されており、文は全てジャネット E.マーフィー氏によるものだと思います。
ここでは空振りに終わった聞き取り調査や村の訪問、空だった罠の確認等(野ネズミやハリネズミ、トカゲやカエルが捕獲されたものも含む)の記述は省いて、ハムスターの捕獲や、それに繋がる内容だけ紹介します。
まずは、マイケル R.マーフィーとはどんな人物だったかについてです。

引用:

マサチューセッツ工科大学の心理学科大学院生だったマイケル・ロス・マーフィーの研究室にはハムスターがいました。
彼は神経解剖学を学び、ハムスターの脳の構造を解明する方法を学ぶ過程で、特に交尾行動と縄張り行動に興味を持ち、嗅覚がハムスターの行動に大きく依存していて、嗅覚がないと交尾も縄張りの防衛もしようとしないことを発見しました。
マイケルは、この動物の珍しい特徴は近親交配によるものではないかと仮説を立て、もしそうなら、野生のハムスターと実験室のハムスターを比較することが有益だと考えました。そこで彼は、シリアで野生のハムスターを捕獲するため、MIT心理学部とスローン財団から旅行の許可と資金を得ました。私はアシスタント兼写真家として同行することになりました。1970年の5月から6月にかけて、イスラエルとシリアの長引く戦争がちょうど終結したばかりでした。

次に、アレッポでの捕獲のための協力者についての記述です。マーフィー氏は、出立前から野生のハムスターについて情報を持っていそうな科学者たちと連絡を取り、現地で彼らと面会して話を聞いたり、資料を集めたりしていました。そのうち、レバノンのベイルート・アメリカン大学の研究者だったカシス兄弟の父親がアレッポにいて、彼の紹介により、日本人獣医師の折田氏や、シリア農業省計画局のバハディ氏の協力を得ることができました。

引用:

アレッポへに到着した5月22日に、私たちは婦人科医のイスカンデル・カシス博士に連絡を取り、カシス博士は私たちを、ジオ・オリタ博士に紹介してくれました。
折田博士は38歳の小柄な男性で、地元の農家や獣医師に対し、畜産の最善の方法を精力的に指導していました。(折田魏朗獣医師)
折田博士は、ハムスターの輸出に必要な書類を発行してくれるといい、私たちとカシス博士をファイエク・バハディ氏に会わせてくれました。
バハディ氏は農場訪問の手配や、農家との面談の際に通訳を務めてくれました。
折田博士とバハディ氏は私たちを農業省の農場まで連れて行ってくれました。そこで私たちは、村の近くの畑でハムスターを捕まえたという作業員に会いました。ハムスターはスイカの根や茎を食べているとのことです。

そして、いよいよ、クルド人の農夫アリ氏との出会いです。

引用:

バハディ氏の案内で、私たちは次にベニヤミーン村へと向かいました。
ベニヤミーンの村人たちはハムスターには慣れていましたが、見つけるのは難しいと言っていました。村からかなり離れた場所にある、使われていない畑で、アリ氏がハムスターの巣だと特定した穴がいくつか見つかりました。
翌日、別の村へ車で向かうと、アリ氏はハムスターの巣穴のある畑を見せてくれました。彼は穴の一つを掘り起こそうとさえしました。
検討の末、最終的に別の畑に罠を仕掛けることにしました。
私たちは村や農場、地元の人々を訪ね、ハムスターについて尋ねるという日課をこなすようになりました。
アリ氏は私たちをクバラという別の村に連れて行ってくれました。
農家の方々はいつも、ハムスターがよく見かける場所を教えてくれ、私たちは罠を仕掛け、ピーナッツバターを少量付けました。
5月28日、アリ氏が、逃げようとするハムスターに服の布を投げかけ、捕まえてくれました。彼は、ハムスターが灌漑用水路を渡ろうとしている時は、この方法の方がやりやすいと教えてくれました。
彼はそれを5ガロン(約12L)の空き缶に入れて、翌日、私たちが罠を確認するために戻った時に渡してくれました。
アリ氏はクバラでハムスターを捕まえ、次の村で私たちに会いに来ました。
マイケルはアリ氏にハムスターの代金と10シリア・リラ(約2.5ドル)、そしてアリ氏の協力に対する謝礼として25シリア・リラを支払いました。

マーフィー氏は、金属製の罠よりも生きたハムスターを捕まえる成果が上がるので、農家に支払うことにしました。毎日、彼らはいくつかの村を訪ね、ハムスターが捕獲されているかどうかを確認しました。

引用:

6月3日、折田医師の診療所に立ち寄ると、そこにはゼルベ出身の男性がいて、野生のハムスターを連れてきてくれました。20シリア・リラで買い取りました。ホテルに戻り、ハムスターを5ガロンの缶に入れたまま部屋に残しました。
その後、アリ氏に会いにブラフトに行きました。彼は私たちのためにハムスターを2匹捕まえていました。1匹は生きていて、もう1匹は死んでいました。
ある日、バハディ氏のオフィスに行くと、ベニヤミーンから持ち込まれたハムスターがいました。現地ではもう1匹ハムスターが見つかり、1匹につき20シリア・リラを支払いました。
6月14日の朝、私たちはアリ氏の農場へ別れの挨拶に行きました。帰り道、道沿いの村でハムスターを1匹捕まえたので、15シリア・リラを支払いました。

ホテルの部屋では、蓋を外した5ガロンのブリキ缶をいくつか用意し、ハムスターをそこに入れて飼育していましたが、アメリカにハムスターを輸送するため、マーフィー氏は2✕3の区画に分け、全体を覆える網戸付きの蓋と革製の持ち手を付けたスーツケースのようなものを2つ特注し、帰国の日を迎えました。

引用:

6月15日、折田博士に最後の別れを告げ、ハムスターの輸出に必要な正式な書類を受け取りました。
ハムスターたちをキャリーボックスに安全に収め、旅の途中で暑くなり過ぎないよう配慮しました。例えば、車の窓を開け放ち、車内に心地よい風が入るようにしました。
その後、レバノン国境を抜け、ベイルート・アメリカン大学の心理学部では、マイケルが動物を別々のケージに入れることができました。死んだ1匹の動物はホルムアルデヒドに漬けられました。
翌日、私たちはTWAとルフトハンザ航空のオフィスを訪れ、航空券を手配しました。マイケルは貨物担当者と話をし、ハムスターは専用の荷物室で輸送できることを確認しました。
ボストンへの帰路、ハムスターたちを2つの移動用ケージに慎重に入れました。ケージにはそれぞれリンゴのかけらと綿を敷き詰めました。13匹だったので、オス2匹で同じコンパートメントに入りました。チェックインの際、マイケルはハムスターの荷物室の安全性について再度尋ねました。人間の乗客と同じように、与圧と酸素供給が必要でした。
フランクフルトで乗り換えましたが、次の便の飛行機には与圧式の荷物室がなく、ハムスターの箱をファーストクラスの最後尾の座席の後ろに立てかけて置くことが許可されました。
ボストンに到着すると、12匹のハムスターはMITで規定の期間検疫隔離された後、心理学部の飼育施設で個別のプラスチックケージに入れられ、飼育されることになりました。

最後に、野生のハムスターのその後についての記述です。

引用:

これらの野生動物は飼育下で非常に人懐っこく、繁殖も容易でした。最初の6回の妊娠で61匹の子が生まれました。毎日観察され、邪魔をされていたにもかかわらず、母親は子どもたちを丁寧に育てました。これは、飼育下にあるハムスターでは必ずしも当てはまりません。彼は、これらの野生ハムスターは外見上は飼育下にあるハムスターと区別がつかないと指摘しました。
行動に関しては、飼育下にあるハムスターに見られる行動を全て示していました。いつものように、自分のケージにマーキングをし、機会があれば他のハムスターのケージにもマーキングをしていました。
彼らは美しい巣を作り、餌のペレットを蓄えてケージの片隅に積み上げ、別の隅をトイレとして使っていました。メスは正常な生殖行動、交尾行動、母性行動を示し、子どもは成長するにつれて互いに遊び始めました。
交尾の時、あるいは巣の中で母子が一緒にいる時以外は、ハムスター同士は互いに寛容ではなく、攻撃し、激しく争っていました。
野生のハムスターたちを唯一際立たせていたのは、「完璧なハムスター」だったことです。
マイケルはこう指摘しました。「彼らの自然な行動は全て調和がとれていた。
飼育下にあるハムスターから自然な行動の一部を引き出すことは可能だが、野生で捕獲したハムスターほど聡明なハムスターは滅多にいない」。
博士号を取得後、 夫は1972年に、ワシントンD.C.にあるスミソニアン協会国立動物園研究部の博士研究員として研究に携わりました。夫は1971年に野生捕獲された動物の子孫のコロニーをそこに移し、進化行動に関する研究を行いました。
1974年には、そのコロニーをメリーランド州にある国立衛生研究所(NIH)に移し、その一部は行動神経科学と行動薬理学の研究に使用しました。
1982年、私たちがMITを去ってテキサスに引っ越した後、コロニーはウィリアム・ニクソン博士によって維持され、近親交配の影響や免疫学に関する研究のために標本を提供しました。
このコロニーが現在も維持されているかどうかは不明ですが、1985年にはアンドリュー・ルイス氏がNIHでマーフィー系統のハムスターを維持していました。

スミソニアン及び国立衛生研究所から、マーフィー氏や野生のハムスターに関する情報が得られたのは、縁があったからだということが分かりました。また、本書ではマーフィー氏の論文がいくつか挙げられていたので、そこからも何か分かるかも知れないと思いました。

表題:

Re: 野生のハムスターに関する先行文献 3


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「山登魚」さんの引用:

そこで初めてキラキラの目をしたジャンガリアンの子の存在に気付きました!

スタンドを作っている最中のオヤツくれくれコールは無視していたんですが、作り終わりケージから出すと、スタンドよりオヤツなので、私に向かって仁王立ちでした。
それでは撮影どころか邪魔にしかならないので、無理やりスタンドの下に詰め込んだら、中で方向転換したり匂いを嗅いだり3分くらい確認していましたね。その時の写真です。
作ったスタンドは、写真のジャンガリアンのケージに使っているのですが、給水器スタンドの下のスペースは、エサ場の近くの安全な隠れ家になり、お気に入りのスペースな様で、何度も入っている姿を見ますね。
それと、くれくれコールを無視していたら、スタンドに八つ当たりして位置がずれてました。

引用:

「呪われた人類の実験の餌食になるよりは、我が子が死ぬ方がましだ」と。

実験の道具として扱うのか、目標を達成するために必要なパートナーとして扱うのかの違いで、ハムスターの安心感も違いますよね。

引用:

私がシリアで捕獲した野生ハムスターは、わずか3日間扱っただけで、飼い慣らされて穏やかになった。

研究者が思う「慣れる」の程度は分からないですが、懐きやすいのは、ハムスターは頭が良いので、すぐに損得の判断ができるということですね。

引用:

平均の子どもの数は11匹で、観察や体重測定のために頻繁に邪魔されたにもかかわらず、全ての子どもが離乳まで育てられた。

ハムスターを繁殖に興味がある人。ここ重要。

引用:

これらの野生動物は飼育下で非常に人懐っこく、繁殖も容易でした。

野生動物でも、人間に近い所に住んでいる個体は、人間をあまり怖がらないのかもしれないですね。逆に人間の怖さを知らないのかもしれないですけど。
そう考えると、地球上には人間が完全に干渉できない場所はないわけで、完全な野生動物は存在しないのかもしれないですね。

引用:

飼育下にあるハムスターから自然な行動の一部を引き出すことは可能だが、野生で捕獲したハムスターほど聡明なハムスターは滅多にいない

何が違うのか気になります。
とはいっても、実験動物でもペットでも、野生の環境を再現するのは難しいと思いますが。

フォーラムの評価機能を利用すると、必要な記事を見つけやすくなるなど、閲覧と管理に影響します。
そのことで、他の飼い主のサポートができるだけでなく、より深く話し合えるきっかけになります。
表題:

Re: 野生のハムスターに関する先行文献 3


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「管理者」さんの引用:

無理やりスタンドの下に詰め込んだら、中で方向転換したり匂いを嗅いだり3分くらい確認していましたね。その時の写真です。
作ったスタンドは、写真のジャンガリアンのケージに使っているのですが、給水器スタンドの下のスペースは、エサ場の近くの安全な隠れ家になり、お気に入りのスペースな様で、何度も入っている姿を見ますね。
それと、くれくれコールを無視していたら、スタンドに八つ当たりして位置がずれてました。

あの表情は偵察モードでしたか。
エサ場までのルート上に身を隠せる場所が増えて、さらに安心して暮らせるケージになりましたね。
オヤツをもらいたい意思表示を汲んでもらえず、暴れるところが相変わらずこの子らしいなと思いました。

「管理者」さんの引用:

実験の道具として扱うのか、目標を達成するために必要なパートナーとして扱うのかの違いで、ハムスターの安心感も違いますよね。

引用:

観察や体重測定のために頻繁に邪魔されたにもかかわらず、全ての子どもが離乳まで育てられた。

ペットのメスのハムスターは、子育て中は誰が相手でも非常に神経質なようですけど、野生のハムスターは、相手が危険か親和的かを察知して、巣を破壊したタハン氏やアハロニ氏に脅威を感じて子どもを食べたり、マーフィー氏の干渉を無視して子育てしたりしていたのでしょうか。もしそうだとすれば、犬や猫に近い賢さですね。

先日、野生のジャンガリアンハムスターに関する論文(「化学シグナル伝達に関する野外研究:ソビエト アジアにおけるドワーフハムスターの直接観察」)を読んでいたら、研究者の方が個体識別に名前を付けていました(ライサとバーバラ)。
ガッターマン氏のチームでは、野生のゴールデンハムスターの個体識別に数字を使用していて(昼間最も活動的だったメスは#308と#P20)、ちょっとしたことではありますけど、研究者の動物に対する姿勢も様々だなと思いました。
もっとも、私も以前飼っていたネズミの名前は、色々考えた末ネズミのままで定着してしまい、動物病院で名前を呼ばれた時、恥ずかしかったです。

「管理者」さんの引用:

懐きやすいのは、ハムスターは頭が良いので、すぐに損得の判断ができるということですね。

別トピックに挙げた論文の中に、ゴールデンハムスターが実験前に受けた訓練について記載があったのですけど、給水器から水を飲める仕組みが段階ごとに変わっていってもすぐに慣れて、光や音の信号を理解して行動する訓練で、短期間のうちに90%以上の正答率に達していました(100%の個体もいたとのことです)。
犬やミニブタ、サル等と比べて飼育スペースを取らず、繁殖が計画的にでき、頭が良くて懐きやすいからこそ、実験動物にも向いていたんですね。

「管理者」さんの引用:

野生動物でも、人間に近い所に住んでいる個体は、人間をあまり怖がらないのかもしれないですね。逆に人間の怖さを知らないのかもしれないですけど。

山に行くと、たまにクマやサル、カモシカ等を遠くに見つけることがあって、人間を恐れて距離をとってもらわないと、こちらが怖いです。

「管理者」さんの引用:

何が違うのか気になります。

同感です。野生のハムスターの生態に関する情報は貴重なのに、そのあたりをバッサリとカットされていて残念です。マーフィー氏の他の論文も可能であれば読んでみたいです。
現在出版されている書籍は、ネット上で閲覧することが難しく、個人で購入して翻訳するものは精選する必要があります。
論文も一般公開されているものと、学術機関を通じたアクセスを要するものがあります(年間契約するのに何十万円か掛かります)。
自分の母校は動物学研究にあまり力を入れていないので、次に大学に行った時、どこまで調べられるか分からないです。学生の皆さんには、ぜひ動物学研究の盛んな大学に進学して、フィードバックをお願いしたいです。

表題:

Re: 野生のハムスターに関する先行文献 3


投稿日時:

「山登魚」さんの引用:

ペットのメスのハムスターは、子育て中は誰が相手でも非常に神経質なようですけど

ペットだと、子供が歩き回って自分でエサを食べるようになると、子供の世話を飼い主に押し付けられます。

「山登魚」さんの引用:

研究者の方が個体識別に名前を付けていました(ライサとバーバラ)。

うちは野生色のゴールデンハムスターは、全員「ミケ」ですね。ミケ4号とかが名前です。
ゴールデンハムスターは一緒に飼うことがないので、困らないです。

「山登魚」さんの引用:

もっとも、私も以前飼っていたネズミの名前は、色々考えた末ネズミのままで定着してしまい、動物病院で名前を呼ばれた時、恥ずかしかったです。

病院や記録を読むときに困るので、一応名前は付けていますが、ハムスターが自分の名前を覚えないので、集団飼育していない個体の名前はまず呼ばないですね。
特にジャンガリアンハムスターは、ジャンガリアンっぽい性格をしているから、あだ名みたいにジャンガリアンと呼んでます。

「山登魚」さんの引用:

年間契約するのに何十万円か掛かります

結局、時間とお金がないと勉強ができないんですよね。
そんな意味でも、論文の引用は助かってます。

「山登魚」さんの引用:

学生の皆さんには、ぜひ動物学研究の盛んな大学に進学して、フィードバックをお願いしたいです。

お金にならないペットを、変人の獣医師が支えてくれているところもあるので、変人の学生さんにも協力していただきたいと、変人の管理者も考えています。

フォーラムの評価機能を利用すると、必要な記事を見つけやすくなるなど、閲覧と管理に影響します。
そのことで、他の飼い主のサポートができるだけでなく、より深く話し合えるきっかけになります。
表題:

Re: 野生のハムスターに関する先行文献 3


投稿日時:

「管理者」さんの引用:

ペットだと、子供が歩き回って自分でエサを食べるようになると、子供の世話を飼い主に押し付けられます。

それも驚きです。飼い主を信頼しているとそうなるのでしょうか。

「管理者」さんの引用:

うちは野生色のゴールデンハムスターは、全員「ミケ」ですね。ミケ4号とかが名前です。

ゴールデンの子は、あまり強そうな名前ではないのですね。

「管理者」さんの引用:

ハムスターが自分の名前を覚えないので、集団飼育していない個体の名前はまず呼ばないですね。

引用:

「(ハムスターは)名前というよりも、言葉のイントネーションや雰囲気で反応するのです。
犬は、「タロー」と呼んでも、同じイントネーションで「タマー」と呼んでも反応します。最初の「タ」で感じているのです。動物は、言葉の最初の音と、それに続くイントネーションで、「同種ではない生き物が自分に関係のある信号を発している」と理解するんでしょうね。」
野村潤一郎『Dr.野村のハムスターに関する100問100答』(株)メディアファクトリー 2001年11月 p.121〜122

うちのジャンガリアンの名前は「カイ」です。名前と同じくらい、家族からも「カワイイ」と声を掛けられるためか、「カ」の音に反応して耳をピンと立て、猛烈にアピールしてきます。

「管理者」さんの引用:

結局、時間とお金がないと勉強ができないんですよね。
そんな意味でも、論文の引用は助かってます。

いつまで洋書や外国語論文の読み込みに時間がとれるか分かりませんけれど、そう言って頂けると嬉しいです。
集中力が切れると、分かりやすい言葉に置き換えずにそのまま原文を引用してしまい、読むことを挫折されかねない点が反省すべきところです。

「管理者」さんの引用:

お金にならないペットを、変人の獣医師が支えてくれているところもあるので、変人の学生さんにも協力していただきたいと、変人の管理者も考えています。

変人の飼い主として、私も引き続きお世話になりたいと思っています。

表題:

Re: 野生のハムスターに関する先行文献 3


投稿日時:

補足です。

「管理者」さんの引用:

ハムスターが自分の名前を覚えないので、集団飼育していない個体の名前はまず呼ばないですね。

管理者様の声が低くて、ハムスターたちが聞き取れていないから、名前に反応しない、ということではないかと思いますが、いかがでしょうか?

表題:

野生のPhodopus属のハムスターについて


投稿日時:

今回から、フォドプス(Phodopus)属の主要な3種のハムスターについて、先行文献を紹介していきたいと思います。
まず、Wikipediaの日本語版を確認したところ、ほとんど参考文献が使用されていませんでした。
英語版は参考文献が多いのですが、飼育書が中心で、全てを購入するのは現実的でないため、ネット上で内容を確認できる論文に限定して共有します。
ジャンガリアンハムスターとキャンベルハムスターの呼び方は研究者によって様々で、単にジャンガリアンハムスターと書いてある場合、文献によってはジャンガリアンハムスターとキャンベルハムスターの両方を指す場合もあれば、キャンベルハムスターのことを指している場合もあります。
ここでは、学名Phodopus sungorusでジャンガリアンハムスターとキャンベルハムスターをひとくくりにしている場合にはドワーフハムスターと表記し、学名Phodopus(sungorus)sungorusはジャンガリアンハムスター、学名Phodopus(sungorus)campbelliはキャンベルハムスター、そして学名Phodopus roborovskiiはロボロフスキーハムスターの名称に統一します。

はじめに、アグーチ(野生色)のジャンガリアンハムスターとキャンベルハムスターの外見上の違いについて、キャンベルハムスターの名付け親、トーマス・オールドフィールド氏の論文をベースに、後述のウテ・ハマン氏(1985)やパトリシア・D・ロス氏(1998)の論文の内容も加味して、以下にまとめます。

引用:

トーマス・オールドフィールド(Thomas Oldfield)「モンゴル産クリケトゥルスの新種について」自然史ジャーナル 第15巻87号 1905年 p.322~323

ジャンガリアンハムスターは、夏の顔は灰褐色で、口、耳介、耳の部分はやや明るい色である。頭部の残りの部分は暗褐色から黒色で、耳の外側と目の周りの縁は黒色である。
背中の中央には、頭頂部の暗い斑点から尾の付け根まで、黒褐色の縞模様が走っている。縞模様は幅広く、最も狭い部分で幅3.5mmと、キャンベルハムスターのものより少なくとも1mm広い。
また、背部の毛皮と腹部の毛皮の間に、茶色がかった黒色の毛の筋が曲がりくねった境界線を形成している。
夏毛は灰色で、頭頂部、肩、脇腹に黒っぽい斑点がある。足、尾、喉、腹部の白い毛は上方に伸びて、肩、側面、腰に3つの窪みを形成している。冬毛は白く、頭頂部に灰色がかった色をしていることがある。
頭蓋は背側から見るとキャンベルハムスターより丸みを帯びており、頭蓋骨の平均長さ、幅、深さはより大きい。頭胴長は70~90mm、尾長は5~15mmである。
これに対し、キャンベルハムスターは、黒い背部の縞模様は頭頂部からかすかに始まり、より細く、はっきりとした線が、尾の付け根まで伸びている。肩の斑点はジャンガリアンハムスターより淡い。夏毛は灰色で黄色がかった輝きがあり、ジャンガリアンハムスターより明るい。夏毛の側面と下面には黄褐色またはベージュ色の縞模様があり、灰色の部分がそれらを区切っているが、わずかに暗色を帯びている。腹側の毛皮は白色で、基部はスレートグレー。冬毛は黄褐色のないライトグレーである。
耳はジャンガリアンハムスターよりもはるかに小さく、その色はC.dichrootis, Satuninで記載されている通りで、外面前半の黒色が、耳の後縁の白さと顕著なコントラストを成している。手足の上部は銀白色である。
タイプ標本の寸法(スピリット標本を用いて測定)は、頭体長87mm、尾長7mmである。

表題:

野生のPhodopus属のハムスターについて


投稿日時:

次に、時系列に沿って各論文を紹介していきます。
こちらは、まだ野生でも見られることがほとんどなかった時代に、チェコのプラハ動物園が、ソビエト連邦からフォドプス3種を入手し、屋外飼育した観察結果を、野生のハムスターについての研究と比較し、報告した内容です。

引用:

Z.ヴェセロフスキー、S.グルンドヴァ「ジャンガリアンハムスターに関する知識への貢献」プラハ動物園 1964年6月 p,305~311

ジャンガリアンハムスターは完全に乾燥した場所に生息し、ステップ高原の標高2,500~3,000mにも生息する。ハムスターに典型的な巣穴を掘り、垂直と水平の通路を4~6つ作る。トンネルの深さは最大1mだが、通常は20〜30cmである。彼らはまた、他の齧歯類の巣穴を占拠する。
体長と体重は、1964年3月と4月の春の初め、つまり動物の繁殖活動が始まる時期に記録された。既に2匹のメスが妊娠していた。
体長に関しては、Bannikov(1954) と Vinogradov(1952) が野生のジャンガリアンハムスターについて報告した最大値とほぼ同じで、オスの平均体長(n=4)は97.2mm、メス(n=5)の平均体長は94.7mmであった。
オス(n=4)の平均体重は38gで、妊娠したメスを含めるとメス(n=5)の平均体重は43g、妊娠していない3匹のメスの体重はそれぞれ31、35、46gであった。
屋外で飼育されたハムスターは、-20℃の厳しい霜の中でも非常に活発で、冬眠する個体はいなかった。これは先述の野生での観察結果と一致している。
自然界では、ジャンガリアンハムスターは年に3~4回繁殖する。出産のほとんどは春と夏に起こる。野生でも飼育下でも、秋から冬にかけての出産を記録することができた。1962年と1963年に、屋外で飼育されていた2匹のメスのハムスターが、-20℃の気温でも子供を産み、育てることに成功した。
Skalovによれば、冬季には野生のメスの最大60%が繁殖し、1月から3月にかけては子連れのメスが発見され、同時に妊娠したメスが殺される事案も発生している。1回の出産で4~8匹の子が生まれるが、通常は5~6匹である。
他のハムスターとは対照的に、ジャンガリアンハムスターは非常に温厚な動物である。野生で捕獲されたものであっても、噛んだり身を守ったりすることなく拾うことができる。
ハムスター同士の間でも、ゴールデンハムスターに比べて攻撃的になることは遥かに少なく、通常は喧嘩を起こさずに、より大きなグループで飼育することもできる。一方、メスがオスに重傷を負わせるという事件が二度起こった。
ジャンガリアンハムスターの春の換毛は、野生でのいくつかの観察と一致しており、2月から3月に始まり、3月末または4月初めに終わる。秋の換毛は9月に始まり、11月から12月上旬に終わる。屋外のテラリウムで飼育されているジャンガリアンハムスターの中には、12月に換毛が始まり、背中の灰色の縞模様を除いて完全に白い冬毛になるものもいる。ハムスターは同じ環境で飼育されているにもかかわらず、毛が完全に白い毛に変わるのを観察できたのは少数の個体だけで、他の個体は灰色の秋の毛のままであった。
これに対し、キャンベルハムスターは色が薄く、冬には毛皮は白くならないか、部分的にしか白くならない。
キャンベルハムスターの体長と体重は、Bannikov(1954)及びAllen(1940) が提示した領域内で、体長は76~103mmであった。

表題:

野生のPhodopus属のハムスターについて


投稿日時:

前回の補足です。

「山登魚」さんの引用:

オスの平均体長(n=4)は97.2mm、メス(n=5)の平均体長は94.7mmであった。
オス(n=4)の平均体重は38gで、妊娠したメスを含めるとメス(n=5)の平均体重は43g、妊娠していない3匹のメスの体重はそれぞれ31、35、46gであった。

n=4とは、標本数は4匹、n=5とは、標本数は5匹、という意味です。

「山登魚」さんの引用:

耳はジャンガリアンハムスターよりもはるかに小さく、その色はC.dichrootis, Satuninで記載されている通りで

また、C.dichrootis, Satuninという部分を訳出し忘れました。
サトゥーニンが分類した、学名クリケトゥルス・ジクロティスの齧歯類は、モンゴルキヌゲネズミ属(ハタネズミやハムスターの仲間)で、その後、分類が変わったのか、確認されていないのか、よく分かりませんでした。
クリケトゥルスにはチャイニーズハムスターやロングテールドワーフハムスター等が分類されているので、そのようなスリムな体形で、キャンベルの毛色と同じハムスターのイメージで捉えれば良いかと思います。

引用:

ウテ・ハマン「ドワーフハムスター3種の活動と行動について」哺乳類生物学 第52巻1985年12月 p.65~76

  • 野生のジャンガリアンハムスター・キャンベルハムスターの特徴
  • 堅い土壌の、低木植物のない半砂漠や草原地帯を好む。しかし、生息域周辺の森林ステップ地帯や森林の断片にも生息し、例外的に、湿った白樺やポプラの茂る池、背の高い草が生い茂る牧草地、川の渓谷にも生息する。茂みが密生し岩の多い地域では珍しい。
    5月末までに生まれた若い個体は、最初の夏に繁殖することがよくある。メスは、多くの場合、1回の生殖期間を超えて繁殖可能である。しかし、非常に高い繁殖率を達成した場合は、翌年の初めにのみ繁殖する。
    寿命は、約2~2.5年で、極端な気象条件下であっても、少なくとも晩夏から初秋に生まれた個体は2度目の冬を生き延びたため、冬には2世代が同時に発生するのが普通である。
    行動は、率直・直接的で、接触を恐れない。動きがかなり鈍重で、非常に簡単に完全に飼いならされる。文化的景観(人為的な森林、野原、牧草地、道路、集落、住居)の中に入り、その恩恵を受けることもある。
    巣の移動は見られない。巣が乱された時は、洞窟や隅に逃げる。
  • 野生のロボロフスキーハムスターの特徴
  • 緩い砂地を好み、植物がまばらにしか生えていない純粋な砂地のみに生息する。植生は重要な役割を果たさないが、植物が砂を覆うと、すぐに姿を消す。
    繁殖は、生まれて最初の冬の後の春にのみに行われる。2月に生まれた個体であっても、翌年の春まで出産しないため、この場合はすでに12ヵ月齢になる。
    寿命は約1~2年で、通常、生殖期を過ぎると死亡率が非常に高くなる。多くの個体は、夏の終わりまで、すなわち17~19ヶ月齢で既に明らかな老化の兆候が現れている。繁殖期は老化が早いため、生息域の厳しい冬の条件下では寒い季節を生き延びる可能性は低い。したがって、ロボロフスキーハムスターの冬季個体群は、幼獣のみで構成されるはずである。
    行動は、非常に機敏で、俊敏で、活発であり、常に非常に活動的で、ぎくしゃくした短い、ほとんど神経質な動きをする。極端に人間に近づくことを避ける種であり、集落の近くには決して住まない。何にでも接触を非常に恐れ、半円を描いて近づき、横に歩く。
    若い個体が巣を移動させる。巣が乱された時は上方に逃げ、高い場所に長時間静止したまま留まる。
  • 行動と活動パターンについての比較研究
  • ジャンガリアンハムスターとキャンベルハムスター、及びロボロフスキーハムスターをそれぞれペアで屋外飼育し、巣の入り口の使用を記録した。キャンベルハムスターとロボロフスキーハムスターはベルリン・フリードリヒスフェルデ動物園から、ジャンガリアンハムスターはブラウンシュヴァイク動物学研究所とペットショップから譲り受けた。
    測定は2月に追加の人工照明の下、室温で行われた。巣室に通じる通路は全て折り戸で閉じられた。ドアが開く度にマイクロスイッチが作動し、その信号がイベントレコーダーによって記録された。
    それぞれの種のハムスターを8匹ずつ、1日24時間にわたって、1時間ごとに通過頻度を計算した。
    同時に、回し車が使われるとマイクロスイッチが入り、その信号が記録された。

    3つの分類群のそれぞれについて、検査した。全てのペアは生後3週間の若い動物としてお互いに紹介されており、相性が良かった。
    ロボロフスキーハムスターの歩行活動は1979年2月から1980年5月までの15か月間記録されたが、ジャンガリアンハムスターとキャンベルハムスターは涼しい季節(1979年11月から1980年5月)の6か月間のみ記録された。
    ロボロフスキーハムスターは、夏期の主な走行活動は夕方遅くに発生し、秋と冬には午後遅くの暗い時間帯に集中する。2月から3月にかけて活動が急激に減少し、平均1日活動時間は10分未満となることが明らかになった。次の月は活動期間が長くなり、夕方の時間帯に移行する。
    一方、キャンベルハムスターは、主に夕方に走行活動が発生する。特に2月から3月にかけて活動がピークを迎え、平均1日活動時間は6.5時間を超える。ロボロフスキーハムスターの活動量が最大となる11月に、キャンベルハムスターの活動量は最低値になる。
    ジャンガリアンハムスターの活動発生時期と日照時間の関係は不規則で、活動曲線は全体的な形状がロボロフスキーハムスターと非常に類似している。曲線はほぼ平行で、活動量が最大になるのは11月、最小値はジャンガリアンハムスターの方がロボロフスキーハムスターよりもわずかに1か月遅れている。
    走行活動の持続時間を比較すると、ロボロフスキーハムスターは、ジャンガリアンハムスターとキャンベルハムスターよりも常にずっと短い。
    しかしながら、巣の入り口の使用を記録する検査方法は、通常の飼育条件下では不適切である。ドワーフハムスターは、巣の材料を新しい場所に運ぶため、異常に頻繁に通過する。さらに、活動期間中に巣を繰り返し探す。
    また、回し車の回転数を測定することで得られる知見もほとんど期待できない。なぜなら、ジャンガリアンハムスターがずっと安定して回し車の中に留まっているのに対し、ロボロフスキーは活動段階においてほぼ常に動いているにもかかわらず、一つの活動を継続することがほとんどないからである。

表題:

野生のPhodopus属のハムスターについて


投稿日時:

引用:

パトリシア・D・ロス「Phodopus roborovskii」 哺乳類種 第459号 アメリカ哺乳類学会 1994年6月 p.1〜4

ロボロフスキーハムスターのホロタイプ標本は、1894年7月にロボロフスキーとコズロフによる南山探検隊中に捕獲された(Satunin, 1903)。種名は、採集者であるロボロフスキー中尉に敬意を表して命名された。
ロボロフスキーハムスターの毛皮は柔らかく細く、背中の部分で約9mmの長さである(Thomas,1908)。
南山種の背中の色は、側面と後背部が黄色みがかった明るい茶色 (Satunin、1903)、陝西種の背中の色はくすんだ灰色で、側面と後背部は生成り色からピンクがかった黄土色(Thomas、1908)、またはピンクがかった黄土色(Allen、1940、Sowerby、1914)、満州種の背中の色は灰色(Mori、1930) である。
全ての個体において、基部の毛皮はスレートグレーで、換毛期にはより灰色がかった色になる (Flint、1966)。指の付け根の白い部分を除く、腹面、口の周囲、下肢、足の掌側と足底、及び尾は、純白の毛皮で厚く覆われている。毛皮の外側の前半は灰色から黒褐色で、後半と内側は白色である。背側と腹側の毛皮の境界は明瞭で、背側の毛皮は肩の上方で上向きに凸状になっている。
側面は異なる。上側の耳毛は白色で、下側の耳毛は黒色である(Thomas, 1908)。
頭蓋は背側から見ると円形で、他種のような鋭角状ではない(Argyropulo, 1933)。頭頂間は二等辺三角形状で、吻は細長く、鼻骨は狭い(Allen, 1940)。
ホロタイプ(若いメス)は頭体長90.0、尾長7.0(単位:mm)(Satunin,1903)。モンゴル、満州(黒魯江省及び吉林省)、及び陝西省産のロボロフスキーハムスターは、南山産のものよりも小型で、体型も異なる(Thomas, 1908)。モンゴル産の4個体の外部測定値(単位:mm)の平均値と範囲は、頭体長72.0(67~76)、尾長8.2(7~11)(Allen, 1940)。楡林産の4個体の範囲は、頭体長73~81、尾の長さは11~14(Thomas, 1908)。満州産の4個体の測定値は、頭胴長53~60、尾の長さ7~9(Mori, 1930)である。

ロボロフスキーは、独立国家共同体(CIS)のザイサン盆地とトゥヴィンスカヤ自治区(トゥヴァ共和国)、モンゴル、内モンゴル、新疆ウイグル自治区(Ma et of al., 1987)、中国甘粛省、陝西省、山西省、(Argyropulo,1933; Corbet, 1978; Flint, 1966)、黒龍江省(Ma, 1986; Mori,1930)、及び遼寧省(Li, 1983)の標高1,200~1,450mに生息する(Thomas, 1908; Topál,1973)。
4月から5月にかけて繁殖し、妊娠期間は20~22日で、3~4匹の子を産む。仔の数は3~9匹、平均仔の数は6匹である(Flint,1966)。
メスの腹部には生後6日目までに4対の乳房が発達し、生後17日目には毛で覆われる。幼獣は19日目までに乳離れする。キャンベルハムスターの幼獣は開眼の2日前という早い時期に巣を離れることがあるのに対し、ロボロフスキーハムスターの幼獣(n=27)は、完全に趾行性運動ができる開眼後まで巣を離れなかった(Ross、Cameron, 1989)。

ロボロフスキーハムスターは、固い粘土質の基質や密集した植生に覆われた地域は避ける(Flint, 1966)。テレコール湖付近では、高さ20~30mの孤立したバルハン砂丘に生息しており、その風下側にはニガヨモギなどの砂漠植物が群生している(Yudin et al., 1979)。

モンゴル(Allen, 1940)及びCIS(独立国家共同体)では個体密度が低い(Flint, 1966)。成体のオスは、サクサウール、ムレスズメ、麻黄、ハマビシ、及びソーダノキが点在する半砂漠 (標高1,300m) に囲まれた低地のポプラ林にいた。亜成体のメスは、ソーダノキ及びラシオグロスティス(イネ科の多年草)が点在する石の多い地面の上の砂丘(標高1,350m)にいた。そして、亜成体のオスは、南ゴビ砂漠のノジャン山脈の小川のそばのサクサウール、タマリスクス、及びソーダノキが群生するオアシス (標高1,450m)にいた。
一方、分布域の南部で個体数が多い。陝西省楡林市周辺の砂漠砂丘やオルドス砂漠の砂丘でよく見られることが報告されている(Sowerby, 1914)。
ロボロフスキーハムスターの北部及び東部の分布域は、キャンベルハムスターとほぼ同所的であるが、後者はロボロフスキーハムスターが好む流動的な砂地ではなく、乾燥した干潟などの安定した地面に生息する(Flint, 1966; Hamann, 1987; Vorontsov, 1960)。分布域の北西部では、キャンベルハムスターに加え、バラブキヌゲネズミ、ロングテールドワーフハムスター、モンゴルハムスターといった他の3種のハムスターが生息している。これらの種の食性は競合を回避するのに十分なほど異なっている(Flint、 Golovkin, 1961)。
ロボロフスキーハムスターの生息域の南西部(南山とゴビ南部)は、オナガキヌゲネズミ、アカナキウサギ、ムササビ、ボバックマーモット、ミユビトビネズミ、スナネズミ、ハツカネズミ、ツンドラハタネズミといった、他の小型哺乳類の生息域と重なっている(Bannikov、1960)。遼寧省孟新の東部草原地帯の砂地では、ロボロフスキーハムスターはチャイニーズハムスター、ミユビトビネズミ、イツユビトビネズミ、及び ダウリアンジリスの生息域と重なっている(Li、1983)。
トゥヴァ共和国に生息するロボロフスキーハムスターハムスターの夏の食性は、ほぼ全て、ニシキギ属、カラガナ属、ニトラリア属、ドラコセファルム・ペレグリヌム、アストラガルス属、そしてスゲ属の種子で構成されている(Flint and Golovkin, 1961)。陝西省では、ロボロフスキーハムスターはキビの種子を食べるため、中国名は「穀物貯蔵者」(Allen, 1940; Thomas, 1908)である。
モンゴルに生息するロボロフスキーハムスターの巣穴には、甲虫、ハサミムシ、イナゴの残骸が見られ、食性はほぼ全て昆虫で構成されていたことが示唆されている(Formosov, 1929)。しかし、頬袋の内容物は植物と昆虫がほぼ同量含まれていた(Bannikov,1954)。
ロボロフスキーハムスターの巣穴は、まっすぐな穴の軸が、移動する砂丘に50~150cm伸びている。巣穴の先端にある、より固く湿った砂に掘られた巣穴には、羊毛やラクダの毛を細く裂いて作った球形の巣がある。巣の入り口はすぐに、移動する砂で覆われてしまう(Flint, 1966; Yudin et al., 1979)。

表題:

Re: 野生のPhodopus属のハムスターについて


投稿日時:

「山登魚」さんの引用:

ゴールデンの子は、あまり強そうな名前ではないのですね。

野生のゴールデンハムスターは、三毛猫よりキレイな三毛なので、ミケにしてます。

引用:

最初の「タ」で感じているのです

ジリスやモモンガに関しては、そんなネーミングですね。
名前を付けていない頃、「リ」チャードソンジ「リ」スで、「リ」に反応するので、名前はそのまんまの「リチャード」。「リチャード」でも「リー」でも呼べば返事してくれました。
ちなみに、タイリク「モ」モンガは「モ」なので、名前は「もけ」でしたよ。呼んでも返事はしてくれないですが、振り向いてガン見してきます。

ハムスターに関しては、名前どころか、手を叩いて音を出したりしても、慣れてくると音に反応しなくなる感じですね。手を叩く音は、他の飼い主さんにも実験してもらいましたが、同じ結果でした。
ハムスターが、こっちを向いているときに目の前で呼んでも反応しないですし、人間の声に対する反応がジリスやモモンガと明らかに違うので、私的には、エサがもらえそうなタイミングに、人影や臭いに反応しているだけに見えますね。
元々、音でコミュニケーションしない動物ですし、野生では静かな土地のさらに静かな穴暮らしで、耳も畳めるので、警戒する必要のないと思った音を脳が無視する仕組みが、人間より強いのではないかと思っています。
飼い始めは、いろんな音に警戒して威嚇されたりもするのですが、慣れてくるとケージの掃除中に掃除機の音がしても寝ていたりしますし。
ちなみに人間場合は、警戒する必要のない風の音とか小鳥の鳴き声など、耳には聞こえていても脳が無視してしまうので、意識しないと聞こえないです。

「山登魚」さんの引用:

管理者様の声が低くて、ハムスターたちが聞き取れていないから、名前に反応しない、ということではないかと思いますが、いかがでしょうか?

可能性はありますね。
姪が幼稚園以下の時は、家に着たらすぐに、散歩中でも野良寝していても巣箱に隠れてました。
ハムスターに興味がない甥2人は、まったく警戒されていませんでした。
その子供の歩き方やドアの開け方などもあるので、これも声に反応しているのか、足音に反応しているのか分からないです。

私個人的には、家族の出す騒音はあまり気にならないですけど、嫌いな近所の人の小さな音が気になったりしている時期がありまりましたし。
実体験でハムスターは、エサに不満があるか、人や環境に警戒している場合に、声(名前)に反応するのではないかと思っているくらいです。
まぁ、私がハムスターの名前を呼ばないから、ますます反応しなくなっている可能性もありますよね。

引用:

頭蓋は背側から見るとキャンベルハムスターより丸みを帯びており、頭蓋骨の平均長さ、幅、深さはより大きい。頭胴長は70~90mm、尾長は5~15mmである。

写真だけで判断する時、ジャンガリアンハムスターより、顔がいかつい方がキャンベルハムスターと認識してますね。

引用:

彼らはまた、他の齧歯類の巣穴を占拠する。

ジャンガリアンハムスターに関わらず、飼い主が作った巣箱にもすぐに使ってくれるのも、その習性ですよね。

引用:

屋外で飼育されたハムスターは、-20℃の厳しい霜の中でも非常に活発で、冬眠する個体はいなかった。

野ざらしではないことに注意!
ペットの場合、巣箱の外が寒くても、しっかり換毛できる個体なら死なない程度に考えましょう。

引用:

ハムスターは同じ環境で飼育されているにもかかわらず、毛が完全に白い毛に変わるのを観察できたのは少数の個体だけで、他の個体は灰色の秋の毛のままであった。

野生でも、ウインターホワイトになれるジャンガリアンハムスターが少ないんですかね。
うちで白く換毛した個体は、なんせ落ち着きのない個体で、まともに写っている写真が少ないです。

引用:

走行活動の持続時間を比較すると、ロボロフスキーハムスターは、ジャンガリアンハムスターとキャンベルハムスターよりも常にずっと短い。

ペットだと反対になりますね。

引用:

全ての個体において、基部の毛皮はスレートグレーで、換毛期にはより灰色がかった色になる (Flint、1966)。

ロボロフスキーハムスターは、少し毛並みが変わったことがわかる程度で、色までは分からないですね。

引用:

モンゴルに生息するロボロフスキーハムスターの巣穴には、甲虫、ハサミムシ、イナゴの残骸が見られ、食性はほぼ全て昆虫で構成されていたことが示唆されている(Formosov, 1929)。しかし、頬袋の内容物は植物と昆虫がほぼ同量含まれていた(Bannikov,1954)。

ハムスターって、皮や殻まで食べてしまうので、意外と植物の食べかすは残らないのかもしれないですね。

フォーラムの評価機能を利用すると、必要な記事を見つけやすくなるなど、閲覧と管理に影響します。
そのことで、他の飼い主のサポートができるだけでなく、より深く話し合えるきっかけになります。
表題:

Re: 野生のPhodopus属のハムスターについて


投稿日時:

また前回の補足です。

「山登魚」さんの引用:

亜成体のメスは、(中略)にいた。そして、亜成体のオスは、

亜成体のオス・メス、とは、大きさは幼体と成体の中間くらいで、まだ繁殖能力も持っていない状態のオス・メスのことです。

「山登魚」さんの引用:

妊娠期間は20〜22日で、3〜4匹の子を産む。仔の数は3〜9匹、平均仔の数は6匹である (Flint, 1966)。

ロス氏の論文を要約し過ぎて、意味が通らなくなってしまいました。
産まれるのは3〜4匹で、胚痕(受精卵が着床する際、子宮内の表面にできる痕跡)に基づくと、仔の数は3〜9(平均6)匹です。今のところ、フリント氏(1966)の原文は確認できておらず、正確な文意はこれ以上分かりません。

「管理者」さんの引用:

野生のゴールデンハムスターは、三毛猫よりキレイな三毛なので、ミケにしてます。

実物を見てみたいです。うちの近隣のペットショップでは、基本的にジャンガリアン(カラーハムスター)、たまにキンクマが入荷される程度です。

「管理者」さんの引用:

「リ」チャードソンジ「リ」スで、「リ」に反応するので、名前はそのまんまの「リチャード」。「リチャード」でも「リー」でも呼べば返事してくれました。
ちなみに、タイリク「モ」モンガは「モ」なので、名前は「もけ」でしたよ。

ジリスの子がメスでも毎回リチャードだったのは、名前に反応するから、という理由もあったのですね。どんな返事をしてくれたのか気になります。そしてモモンガの子の名前も、理由に納得が行きました。

「管理者」さんの引用:

私的には、エサがもらえそうなタイミングに、人影や臭いに反応しているだけに見えますね。

「管理者」さんの引用:

その子供の歩き方やドアの開け方などもあるので、これも声に反応しているのか、足音に反応しているのか分からないです。

確かに、うちのジャンガリアンも、ただ単に手や床を叩いても、掃除機を掛けても全く出てこないです。聴覚+嗅覚・視覚の総合判断で、何かもらえそうなタイミングを学習しているのかも知れません。
別トピックで引用したゴールデンハムスターの聴覚実験に関する論文(Heffner 2005)でも、訓練開始時は音と同時に給水器近くのLEDが点灯して、その後水が与えられていました。

「管理者」さんの引用:

写真だけで判断する時、ジャンガリアンハムスターより、顔がいかつい方がキャンベルハムスターと認識してますね。

野生色のキャンベルが滅多に流通していないとなると、写真の顔つきで判断するしかないですよね。

「管理者」さんの引用:

ペットの場合、巣箱の外が寒くても、しっかり換毛できる個体なら死なない程度に考えましょう。

この後紹介する、ロス氏のキャンベルハムスターやジャンガリアンハムスターについての論文では、さらに厳しい低温の話が出てきます。
ただ、野生種や実験室のハムスターは、一個体が飢えや寒さで死んでしまっても、研究者から見れば生存率のデータがほんの少し変わるだけかも知れないですけど、少なくとも自分のペットには、できるだけ心身ともに健康で長生きできる環境を整えたいですね。

「管理者」さんの引用:

野生でも、ウインターホワイトになれるジャンガリアンハムスターが少ないんですかね。
うちで白く換毛した個体は、なんせ落ち着きのない個体で、まともに写っている写真が少ないです。

ウィンターホワイトについて分析した他の論文には、今のところ当たれていません。
飼育経験が豊富ですと、そんな稀少な子に出会えることもあるのですね!

「管理者」さんの引用:

ペットだと反対になりますね。

ハマン氏の研究(1985)によれば、ロボロフスキーハムスターは、回し車を頻繁に使用しますが、何度も飛び降りてテラリウムの周りを素早く数回連続して走り回り、その後回し車に戻って数回転するなどの動作を繰り返していて、回し車だけでは正確な距離が測れなかったとのことです。
この後、キャンベルハムスターを中心とするウィン・エドワーズ氏の研究(1992)では、腹腔内にインプラントを埋め込んで追跡調査しており、より正確な走行距離が報告されています。

「管理者」さんの引用:

ハムスターって、皮や殻まで食べてしまうので、意外と植物の食べかすは残らないのかもしれないですね。

引用:

坂田隆「地上でしのぐヒトコブラクダと穴に潜るシリアンハムスターの戦略」『砂漠誌—人間・動物・植物が水を分かち合う知恵』東海大学出版部 2014年4月 p.221〜228

上記論文はロボロフスキーハムスターの話ではなく、植物の栄養を余さず取り込むためのハムスターの消化の仕組みについては、既にハムスターの消化器に記載されているのですが、一応紹介します。
こちらによれば、シリアンハムスターの胃は2つの部屋に分かれていて、最初の部分 (前胃部)には細菌や原虫等の微生物が棲んでおり、炭水化物から乳酸や酢酸等の有機酸を作っています (Hoover et al., 1991)。
重要なのは大型の盲腸で、この中には多数の細菌が棲んでいて、セルロースなどの消化しにくい繊維質を分解してエネルギー源として利用しています。ただし、ハムスターの場合、大腸の内容物は平均で9時間ほどしか留まらず、その結果繊維質(粗繊維)の消化率は24%足らずです (Sakaguchi et al., 1987)。
ハムスターの盲腸の下流には大腸 (結腸) しかなく、せっかくの細菌由来のタンパク質も糞として排出してしまいます。このためハムスターは、他の多くの齧歯類と同様に、食糞をすることによって糞の中の細菌のタンパク質を一部回収しています。
また、植物の種子は脂肪やタンパク質、デンプンなどが多く、栄養価が高い食物です。こうした栄養価が高い食物が前胃の中で微生物によって充分に分解されてしまうと、せっかくのデンプンなどの栄養が酢酸などに変換してしまいます。
もちろん、 酢酸も最終的には利用できるのですが、微生物の増殖や発酵熱などに横取りされて、デンプンから酸への変換効率は60%程度しかありません。ところが、ハムスターのような小型の前胃であれば、餌が微生物によって十分に分解される前に流出するので、 脂肪やタンパク質、デンプンなどをそのまま小腸で消化・吸収できます。

さて、ロボロフスキーハムスターの食性に話を戻すと、フォルモゾフ氏の研究(1929)では巣穴を調べて、その残骸から「食性はほぼ全て昆虫で構成されていた」と考え、バニコフ氏の研究(1954)では頬袋の中身を調べて、「植物と昆虫がほぼ同量含まれていた」と論じました。
この後、ワン氏らの研究(2007)で、頬袋と胃の中味を調べて植物種子が85%以上を占めているという結果が示されています。調べ方で結果が変わってくるというのもあるでしょうし、ロボロフスキーハムスターは地域によって食性が違っているようですから、調査した場所が異なっていたということもあるかも知れません。フォルモゾフ氏とバニコフ氏がどこで調査したのか、原文に当たれていないので、今のところこれ以上は分かりません。

表題:

Re: 野生のPhodopus属のハムスターについて


投稿日時:

引き続き、ロボロフスキーハムスターについての論文を紹介します。
ロボロフスキーハムスターは、20世紀後半から飼育されているものの、実験室ではコロニーの維持・繁殖が難しいらしく、かといって主な生息地である砂漠は観察するにはあまりに過酷過ぎるため、野生種を捕獲し、生息地に近い環境を再現して一定期間飼育し、研究するという手法がとられているようです。

引用:

ナタリア・ユウ・フェオクティストワ、イリヤ・G・メシェルスキー「砂漠ハムスター (Phodopus roborovskii)の繁殖活動の季節変化」中央動物学雑誌 第51巻(1) 2005年1月 p.1〜6

ロボロフスキーハムスターは、中国北部、モンゴル、トゥヴァ共和国南部、カザフスタン南東部の乾燥した砂漠ステップ及び砂漠に生息し、極度の乾燥地域も含まれる(Flint, 1966; Ross, 1994; Meschersky、Feoktistova, 1999)。いずれも人の居住地がまばらで、その生息域の大部分は、冬季はおろか、夏季でさえアクセスすることが困難な地域である。
また、インダス川沿い等の台地には、低い砂丘を伴う広大な砂地があり、沖積平野、河床段丘、扇状地、扇状地を形成している。これらを含め、ロボロフスキーハムスターは、既知の生息地よりも広く分布している可能性がある。

モスクワ州にあるセヴェルツォフ研究所では、1986年から1989年にかけて、南トゥヴァ共和国(エルジン地方)で約20組のロボロフスキーハムスターを捕獲し、半自然環境下でコロニーを維持してきた。ハムスターは、大きなガラス窓が付いた薄い壁の小屋に設置された、暖房のないケージで飼育されている。そのため、ケージは雨や雪などの降水や風から保護され、自然の温度と光にさらされている。
ハムスターには、床材及び巣材として、木くず、綿、苔を与えている。穀物と種子の混合物、野菜、牛乳の凝乳は年間を通して与え、夏季には昆虫や自然植物も与えている。飲水は一切与えていない。
繁殖活動を調べるため、1994年12月から9年間、9~10組のロボロフスキーハムスターを常時観察した。これらのハムスターは、40×20×15cmのケージにペアで飼育された。幼体は生後約1ヶ月で親から引き離された。観察対象のハムスターは、成長と死亡(約12~18ヶ月後)に応じてペアで交代した。
齧歯類等の季節繁殖性哺乳類では、テストステロン値が繁殖期及び長日照時に高く、非繁殖期及び短日照時には低くなる(Zucker et al., 1980; Leonard、Ferkin, 1999)。そこで、2003年の晩夏から1年間、2ヶ月ごとに、7匹の成体オスの血漿テストステロン濃度を測定した。この際、血液サンプルは舌静脈から採取した。動物は傷ついたりストレスを感じたりすることはないようで、処置後すぐに食事を開始することもある。
各月に登録されたオスとメスの体重の平均値(n=9)と産仔数(n=当該月の産仔数)、及びオスの血漿テストステロン濃度(n=7)について、平均値と標準誤差を算出した。

記載した半自然条件下では、ロボロフスキーハムスターは、日最低気温が-40℃を下回る時期にも活動していたが、毛色、毛量、毛密度に視覚的に明らかな変化は見られなかった。
合計で約100組のペアから132匹のメスが出産し、440匹の仔が記録された。
成体の体重は秋から初冬にかけて最小となる。平均値は12月に着実に増加し始め(P<0.05)、2月の出産数の増加は、4月及び7月と比較すると顕著になった(P<0.05)。その後、一腹あたりの仔数は減少したが、出産数が増加し、4月に最初の繁殖ピークが訪れ、この月に生まれた仔の平均数は2月よりも(F<0.02)増加した。5月は繁殖活動がわずかに減少し、6月に2番目のピークが訪れる。春と夏の一腹あたりの仔数は比較的安定している。
9月には、ハムスターの体重とともに繁殖活動が急激に減少した(8月と比較してP<0.02)。秋冬は繁殖活動が低調だが、9年間で9月に4回、10月に2回、11月に1回、12月に3回、1月に5回出産した。
新生仔のオスとメスの比率は、年間を通して1:1~1:1.3の範囲内で変動した。
オスの血漿テストステロン値は、8月下旬から10月にかけて減少し始め、2倍に低下した。12月初旬にはさらに低下した(8月と比較してP<0.05)。2月に入ると上昇し(12月と比較してP<0.05)、4月の平均テストステロン値は2月と同程度であったが、個体差が大きく、大きなばらつきがあった。最後に、6月には平均血漿テストステロン値が年間を通じて最も高くなり、4月よりも(P<0.01)増加した。

フォドプス属3種のうち、ジャンガリアンハムスターは年間を通して活動しており(Judin et al., 1979)、我々の観察結果では半自然条件下で冬季に繁殖することが確認されている(Sokolov、Feoktistova, 1998)。キャンベルハムスターは、冬季には(滅多に)見かけず(Nekipelov, 1960)、外気温が約5℃以下になると野生では休眠すると考えられている(Vasilieva、Parfenova, 2003)。
我々の観察によると、ロボロフスキーハムスターのオスは生後2ヶ月、メスは生後2.5ヶ月、あるいはそれよりも早い時期に繁殖を開始する可能性がある。そのため、春に生まれた子は6月に繁殖を開始し、夏の個体数は、老齢個体の繁殖だけでなく、若い個体の繁殖によっても増加する可能性がある。さらに、飼育下では、ロボロフスキーハムスターの寿命は1年半を超えることもあるが、野生ではもっと早く死んでしまうこともある。トゥヴァ共和国でハムスターを捕獲した際、7月は主に成体だったが、8月にはその年生まれた仔が圧倒的に優勢であった。
結論として、ロボロフスキーハムスターは強い季節繁殖性を持つ種とは言えない。一年中活動的なハムスターは、好条件が整えば四季を通して繁殖することも可能である。

表題:

Re: 野生のPhodopus属のハムスターについて


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引用:

ヴィヴェク・ラマチャンドラン、ムクタ・ジョシ、マユレシュ・アンベカル、サミナ・アミン・チャルー、ウマ・ラマクリシュナン「インド、ラダック地方北西部チベット高原に生息する砂漠ハムスター Phodopus roborovskii (Satunin, 1903)は、インド亜大陸の哺乳類動物相に新たに追加された種である。」哺乳類ジャーナル 第84巻 デ・グリュイター 2020年3月 p.253〜258

インド・トランスヒマラヤ地域における重要な生物地理学的地域であるラダック東部のチャンタン高原(Rodgers、Panwar 1988)は、チベット高原の北西端に位置している。
この地域は更新世と完新世を通して頻繁に氷河期と乾燥期を経験し、厳しい気候条件が、独特な動植物群を支えている(Rawat、Adhikari 2005)。
東アジア/中央アジア大陸のステップ地帯と砂漠地帯は、主要なハムスター分類群の多様化の中心地であったと考えられている(Lebedev et al. 2018)。 6属18種(Musser、Carleton 2005、Lebedev et al. 2018)という多様性にもかかわらず、この地域の小型哺乳類相に関する知見が乏しく、種の同定が困難であることから、我々は捕獲したハムスターの種を特定して、トランスヒマラヤ地域における当該種にとって適切な生息地を確認することとした。

インド、西ヒマラヤの様々な標高において小型哺乳類を捕獲した際、ハムスターの一種を3匹捕獲した。捕獲された個体は、形態計測、目視による推定、及び手のひらと足指の結節が合流して足底にみられる単一の水疱様腫瘤の存在(Ross 1994)に基づき、フォドプス属に属するものと推定された。3個体からは形態計測値と組織サンプルが採取され、安全に解放された。
血液・組織キットを用いて、無水エタノール中で保存された小さな耳片から3つのサンプルのゲノムDNAを抽出した。その結果、捕獲された標本は、p距離とシトクロムb遺伝子系統樹、並びに核vWF及びGHR遺伝子系統樹に基づいて、ロボロフスキーハムスターと同定された。
また、ニッチモデリング (MaxEntモデル及び19の生物気候学的変数)を用いて、分布推定値を修正し、トランスヒマラヤ山脈において本種が生息する可能性のある地域を特定し、既知の分布域から南に約750km拡大した。

引用:

チンシェン・チー、ガンスフ・スクチュルン、ジン・ウェン、王德華、フリッツ・ガイザー「内モンゴル自治区に生息する3種の同所性齧歯類における休眠発現とパターン」現在の動物学 オックスフォード大学出版局 2024年9月 p.1~10

多くの異温動物では、食糧不足や低温にさらされることによって休眠または冬眠が誘発されることがある(Ruf et al. 1993; Diedrich et al. 2014; Vuarin、Henry 2014; Geiser 2021; Przybylska-Piech、Jefimow 2022)。また、短い光周期(冬のような昼の短さ)も、休眠または冬眠状態に入る原因となる可能性がある。
日内休眠は、体温が30℃未満に低下し、休眠期間が24時間未満(平均12.9時間)であることを特徴とする。対照的に、冬眠は体温が30℃未満に低下し、その持続時間が数日から数週間(平均392時間)続くものである(Geiser 2004; Ruf、Geiser 2015)。
アジアの温帯砂漠及び半砂漠には、齧歯類の多様性が高い。同所性(生息地が同一)のロボロフスキーハムスター、バラブキヌゲネズミ、及びミツユビトビネズミは、我々が調査した内モンゴルの野外調査地でも優勢の齧歯類種である(Zhang et al. 2007)。夏季のような条件下では、ロボロフスキーハムスターは夜間絶食すると浅い日内休眠状態を示し(Chi et al. 2016)、寒い冬季条件下では稀に自発的に休眠状態を示すことが報告されている(Ushakova et al. 2012)。
本研究では、2017年8月下旬に内モンゴル自治区ウリトゥスム近郊の渾善達克(フンシャンターク)砂地で捕獲されたロボロフスキーハムスター12匹(オス6匹、メス6匹)、バラブキヌゲネズミ12匹(オス6匹、メス6匹)、ミツユビトビネズミ(オス7匹、メス5匹)を用いた。生息地では、夏には気温が33.8℃に達し、冬には-42.8℃まで下がる(Zhan、Wang, 2004)。
これらの哺乳類は移送され、ハムスターのケージが置かれた動物室の気温は、日内休眠を示す種の平均的な最低気温をわずかに下回る15.8±0.4℃に維持された(Ruf、Geiser 2015)。照明は、9月に12L:12D(6時に点灯、18時に消灯)の光周期とし、10月1日に10L:14D、11月1日に8L:16Dに変更され、実験終了の5月まで維持された。
ハムスターは個別にプラスチックケージ(30×15×20cm)で飼育され、床材(木くずと綿)が提供され、水とペレット(粗タンパク質18%、粗脂肪4%、粗繊維5%以下、灰分8%以下、水分10%以下)、キビとヒマワリの種が自由に摂取できる状態であった。
ハムスターの体重は、2ヶ月ごとに、活動期である暗期に電子天秤を用いて測定した。
ハムスターには麻酔が注射された後、腹腔内にトランスポンダー(重量1.1g)が挿入され、縫合された。
体温はリアルタイムテレメトリーシステム(データ収集システム)を用いて継続的にモニタリングし、統計解析ソフト(SPSS)を用いて分析した。体重変化は、反復測定分散分析(ANOVA)、及びボンフェロー二多重比較を用いて個別に分析した。全てのデータは、個体数(n)に対する平均値±SDとして示し、両側検定においてP<0.05を統計的に有意と判定した。

1月のロボロフスキーハムスターの体重はほとんど安定して18.1±2.3gで、実験終了時にわずかに増加した。性別による体重への影響は見られなかった(P>0.05)。日内休眠しているハムスターの体重は17.3±2.9gで、休眠していないハムスター(21.4±1.6g)よりも軽かった(P<0.01)。
12月にはオス2匹で月2~4回の日内休眠が認められ、1月には、12匹のうち5匹(オス2匹、メス3匹)に日内休眠が発現し、頻度が増加した(それぞれ月2回、2回、2回、3回、10回)。休眠発現は1月以降減少し、2月には2匹でそれぞれ1回、5月初旬には1回のみ、研究期間中、合計6匹のロボロフスキーハムスター(オス3匹、メス3匹)が休眠行動を示した。
ハムスターの休眠期間からの体温の再加温率は、冷却率よりも高かった。体重による影響は見られなかった。日内休眠の開始時間は均一で、点灯1時間前から4時間後までの間、平均すると、8時56分±1時55分であった。また、再加温には21.1±0.9時間掛かった。

我々のロボロフスキーハムスターに関する先行研究では、気温5℃という低温だけでは休眠の発現を誘発できないことが明らかになっている(Chi、Wang 2011)。したがって、ロボロフスキーハムスターにおける日内休眠も、ジャンガリアンハムスター(Ruf et al. 1993; Geiser et al. 2013)と同様に、主に短日条件への反応として起こると考えられる。
ジャンガリアンハムスターの日内休眠の頻度が最も高かったのは1月で、個体の約30%が休眠状態を示した(Heldmaier、Steinlechner 1981)。キャンベルハムスターも、主に11月から1月にかけて休眠状態を示すことが報告されている(Khrushchova et al. 2023)。ウシャコワらの研究(2012)では、ジャンガリアンハムスター、ロボロフスキーハムスター、バラブキヌゲネズミの休眠は主に1月に発現することが示された。本研究で観察されたロボロフスキーハムスターの休眠の発現も、同様に1月にピークを迎えたため、個体群の生存を保障する役割を果たしている可能性がある。
日内休眠は、内因性の概日リズム機能(体内時計)によって制御されていることが実証されており(Kirsch et al. 1991)、本研究でもハムスターにおける日内休眠への移行と覚醒には、概日時計が重要な影響を与えていることを示唆している。
哺乳類及び鳥類において、休眠開始時の体温の冷却速度と休眠からの復温速度は、体重と反比例関係にあり、体重が重くなるほど遅くなる(Geiser、Baudinette 1990; Geiser 2021)が、ロボロフスキーハムスターの冷却速度については、1月の体重(18.1g)から予測される値の約半分の遅さであった。これは、ハムスターの断熱性が高いためか、あるいは約15.8℃という穏やかな温度で測定されたためと考えられる。また、復温速度も、予測式から得られた値より、いくぶん遅い(65.9~91.3%)。
日周性変温動物においては、体重が重くなるほど最低体温が高くなり(Ruf、Geiser 2015)、最低体温と平均休眠時間(TBD)の間には相関関係が認められている(Geiser 2021)。しかし、本研究で観察された休眠中のロボロフスキーハムスターの最低体温の平均は20.6±1.5℃であり、大型のバラブキヌゲネズミの15.9±1.7℃を大きく上回っていた。これは恐らく、ロボロフスキーハムスターのTBDが2.7時間と非常に短く、熱慣性によって体温がそれ以上低下するのを防いだことによると考えられる。
興味深いことに、先述のウシャコワらの研究(2012)では、本研究の気温よりはるかに低い-9℃前後で測定されているにもかかわらず、ロボロフスキーハムスターの休眠中の最低体温が、本研究の測定値よりも高かった。この時の休眠発作はかなり稀なことに早朝ではなく正午以降に始まっており、寒冷ストレスを受けた後のようである。
この原因としては、極寒の状況下では体温が低い値まで下がるままにせず、体温を回復する能力を維持していた可能性が高い (Geiser 2021)。また、巣穴の中で他の個体と群がっている際に、野生では休眠期には経験しない体温に曝露され、体温が維持されていた可能性も考えられる (Geiser 2021)。ジャンガリアンハムスターやアカネズミ等の齧歯類の変温動物では、群がることが休眠状態の頻度や深さ等に影響を与えることが示されている (Jefimow et al. 2011; Eto et al. 2014)。
本研究は9月から翌5月まで実施されたが、夏季のような環境に順応したロボロフスキーハムスターでは、絶食による休眠時の平均最低体温は31.4±1.9℃(最低29.0℃)であり、本研究の体温より10℃高かった。さらに、気温が16℃の環境下でも、ハムスターは休眠行動を示さなかった(Chi et al. 2016)。

表題:

Re: 野生のPhodopus属のハムスターについて


投稿日時:

「山登魚」さんの引用:

うちの近隣のペットショップでは、基本的にジャンガリアン(カラーハムスター)、たまにキンクマが入荷される程度です。

そういえば最近は、ホームセンターに併設されているペットショップでは、ロボロフスキーハムスターを見ないですね。
ゴールデンハムスターもキンクマ率高すぎて、ダルメシアンとかも見ないです。
売れないから入荷しないんだと思いますが、飼い主になる人の情報が偏っているということだろうから、考えると怖いですね。

「山登魚」さんの引用:

どんな返事をしてくれたのか気になります。

ややかすれた感じで「ピー」と「ヒー」の間くらいかな?
リチャードソンジリスは、ペットショップで寂しくなって鳴いている個体がいるので、飼っていなくても聞けるかも。

「山登魚」さんの引用:

聴覚+嗅覚・視覚の総合判断で、何かもらえそうなタイミングを学習しているのかも知れません。

げっ歯類共通だと思うのですが、不満があると歯をカチカチ鳴らす行動は、ハムスターやリスに伝わりますか?
やり返したりしても、ハムスターには多分通じたことがないです。
そういえば、動物園のリスを見ていると、巣箱から顔を出して歯を鳴らされたことがあるのですが、木に生えていたサクランボを与えても止めず、私に向かって鳴らし続けていたんですが、何か通じると思ったんですかね?
ちなみにうちの家では、ゴールデンハムスターがよくしますが、だいたい早く降ろしてと、眠たいのにうるさいです。

「山登魚」さんの引用:

ハマン氏の研究(1985)によれば、ロボロフスキーハムスターは、回し車を頻繁に使用しますが、何度も飛び降りてテラリウムの周りを素早く数回連続して走り回り、その後回し車に戻って数回転するなどの動作を繰り返していて、回し車だけでは正確な距離が測れなかったとのことです。

ケージに問題があるときの行動で、うまく計測できたとしても、あまり参考にはならないですよね。
ちなみにオヤツが欲しい時は、こっちをチラ見しながらゆっくり走り、飼い主が近づくと飛び降りて近づいてきます。うちの個体の回し車の使い方も、あまり役に立たないです。

「山登魚」さんの引用:

ところが、ハムスターのような小型の前胃であれば、餌が微生物によって十分に分解される前に流出するので、 脂肪やタンパク質、デンプンなどをそのまま小腸で消化・吸収できます。

ゴールデンハムスターは、前胃が小さいおかげで、高カロリーのエサも低カロリーのエサも無駄なく栄養にできるんですね。さすがハムスターです。
高カロリーのエサの方が太りやすいと思いますが、エサの質だけで肥満は解消できないということで、食べ過ぎの原因になるストレスに気を付けましょう。

「山登魚」さんの引用:

ロボロフスキーハムスターは地域によって食性が違っているようですから、調査した場所が異なっていたということもあるかも知れません。

コッペパンを必死で食べていたのは、ミルワームを用意できない私に、気遣っての行動ではなかったんですね。
ちなみにロボロフスキーハムスターにミルワーム以外の物を与えると、少し考えてから食べるので、すぐには食べないです。多分、今はミルワームがもらえないと理解したら、諦めて他の物を食べるんだと思います。
ロボロフスキーハムスターは、パンを食べているときにミルワームを渡すと、すぐにミルワームを受け取りますが、ゴールデンハムスターは同じ状況では受け取ってくれないどころか、嫌そうな顔をされる時があります。

引用:

飲水は一切与えていない。

暑くなったり、味の濃い物?を与えると、水を飲んでいるのを見ます。

引用:

動物は傷ついたりストレスを感じたりすることはないようで、処置後すぐに食事を開始することもある。

手術の麻酔が覚めて、完全に覚醒していない状態でも食べたりするんですよね。
ストレスとか関係なく、弱ったら食べたり寝たりして、回復しようとしているのかもしれないです。

引用:

記載した半自然条件下では、ロボロフスキーハムスターは、日最低気温が-40℃を下回る時期にも活動していたが、毛色、毛量、毛密度に視覚的に明らかな変化は見られなかった。

季節の変わり目になると抜け毛が増えますが、目で見ても毛の量はハッキリ分からないですね。
ホワイトフェイスの個体は5月になると換毛できないからか野良寝していましたが、ノーマルの個体は換毛できているのか、巣箱でぐっすり寝ていました。

引用:

最後に、6月には平均血漿テストステロン値が年間を通じて最も高くなり、4月よりも(P<0.01)増加した。

うちのロボロフスキーハムスター(オス)では、1年目の春に急に喧嘩をするようになりました。
ケージを別けたら、急にフレンドリーになりましたが、テストステロンの攻撃性は人間には、向けられないようです。

引用:

多くの異温動物では、食糧不足や低温にさらされることによって休眠または冬眠が誘発されることがある

ペットのハムスターって、明日のオヤツが楽しみで、意地でも起きていそうですよね。

引用:

我々のロボロフスキーハムスターに関する先行研究では、気温5℃という低温だけでは休眠の発現を誘発できないことが明らかになっている(Chi、Wang 2011)。

ペットとしての飼育環境だと、夏はぐったりして、冬の方が元気だったりします。
人間が住んでいる家だと、冬場でも野生環境よりあったかいでしょうし、エサにも困らないですし。

フォーラムの評価機能を利用すると、必要な記事を見つけやすくなるなど、閲覧と管理に影響します。
そのことで、他の飼い主のサポートができるだけでなく、より深く話し合えるきっかけになります。
表題:

少し脱線して鳴き声の話です


投稿日時:

「管理者」さんの引用:

売れないから入荷しないんだと思いますが、飼い主になる人の情報が偏っているということだろうから、考えると怖いですね。

ハムスターの移動の負担を考えると、あまり遠くのお店からお迎えするケースは多くなく、近隣のお店に特定のカラーハムスターしかいなければ、そこにいる子の中から選ぶのは仕方がないことかも知れません。けれども、流行が終わった犬種のように、人気のない種類や毛色に生まれたハムスターの行く末が気掛かりです。

「管理者」さんの引用:

ややかすれた感じで「ピー」と「ヒー」の間くらいかな?
リチャードソンジリスは、ペットショップで寂しくなって鳴いている個体がいるので、飼っていなくても聞けるかも。

もしペットショップで見つけてそんな風に鳴かれたら、連れ帰ってしまいそうです。

引用:

ジェニファー L.スローン、デビッド R.ウィルソン、ジェームス F.ヘア「リチャードソンジリス(Urocitellus richardsonii)の機能形態学、警戒音:さえずり、口笛、チャックの意味」動物行動 第70巻 第4号 2005年10月 p.937~944

上記及びヘア氏の関連論文によれば、リチャードソンジリスは、複雑な警戒音を発していて、主要音節であるチャープやホイッスル、短い後続音のチャックといった鳴き声で、捕食者の種別と対応の緊急性をコロニー内の仲間に伝えます。チャックは、脅威が近くに差し迫っているほど数が増えます(=ピーピー連続して鳴く、Hare 2001)。

引用:

ロイド S.デイビス「リチャードソンジリス(Urocitellus richardsonii)の警戒音」階層心理学の時代 第66巻第2号 1984年1月 p.152~164

これによれば、リチャードソンジリスは空中あるいは陸生の捕食者に対して異なる鳴き声を持ち、チャープは通常、空中の捕食者に反応して発せられ、巣穴へ走っていくという行動反応を引き起こします。逆に、ホイッスルはコロニーのメンバーに陸生捕食動物の存在を警告し、受信者に直立した警戒態勢を誘発します。
ですので、基本的に野生のリチャードソンジリスは、人間の可聴音では、警戒音だけ発していると思います。

引用:

デビッド R.ウィルソン、ジェームス F.ヘア「リチャードソンジリス(Urocitellus richardsonii)の短距離超音波警報信号の適応的有用性」カナダ動物学ジャーナル 第84巻 第9号 2006年9月 p.1322~1330

リチャードソンジリスのホイッスルコールの基本周波数は約8kHzで、コロニー全体に届くこともあるのに対し、超音波コール(ウィスパーコール)の基本周波数は48kHzで、聞こえる距離が短く(約15m)、近くにいる同種のリスに対して使用される鳴き声です。具体的には、幼体が苦痛を訴える時、成体が同性や異性に出会った時、相手がいなくなった時や交尾の後等です。
人間には超音波で話しかけても聞き取れないので、何か肯定的な意思でコミュニケーションを取りたい時には短音で答えていたのかなと思いました。返事をしていたと伺うだけでも、管理者様がどれだけアバターの子に好かれていたかが伝わります。

「管理者」さんの引用:

げっ歯類共通だと思うのですが、不満があると歯をカチカチ鳴らす行動は、ハムスターやリスに伝わりますか?
やり返したりしても、ハムスターには多分通じたことがないです。
そういえば、動物園のリスを見ていると、巣箱から顔を出して歯を鳴らされたことがあるのですが、木に生えていたサクランボを与えても止めず、私に向かって鳴らし続けていたんですが、何か通じると思ったんですかね?

動物に好かれる管理者様が威嚇されるなんて珍しいですね。サクランボが実る初夏はタイガー期ではないですし、犬やリス等、他の動物の臭いが付いていたということはありますか?
うちのシマリスは、ウサギを触った後にお世話をしようとするとすごく怒ったので、一番先にお世話をしていました。

ハムスターは、マウスやリスと同じように、近くの同種に対しては超音波の鳴き声でコミュニケーションしていて(M Fernández、Vargas 2015)、それ以外の時には可聴音で意思表示しているようですから、カチカチ音は人間にも通じると思って鳴らしていると思います。ハムスターが発する音は複雑で、聞き分ける能力も高いようなので、菅理者様のカチカチ音の再現が認識されていなかったか、それとも嗅覚・視覚から総合的に判断して脅威と感じていなかったかのどちらかでしょうか。

獣医師やペットの飼い主の方々によるネット上の記事によれば、ラットやデグー、モルモットは不安な時や威嚇している時だけでなく、リラックスしていて甘えたい時にも歯を鳴らすため、甘えて要求しているのか、威嚇の意思があるのかは、その後の行為で判断するとのことです。これは経験則による知見なのか、甘えの感情を伴って「歯をカチカチ鳴らす」例を示した論文は見つかりませんでした。

参考までに、モルモットの鳴き声は複数の研究者が分析していて、7~11の異なる音パターンを区別しています。好意的な意思表示の例としては、「ツイッ」または「ウィーウィー」は子どもが母親にグルーミングしてもらっている時、「ホイッスル」または強い「ウィート」は飼い主が餌を与える時、「ゴロゴロ」は交尾行動や子どもの愛情表現に関連する、喉を鳴らすような鳴き声とのことです(Thomas M. Donnelly.et al., 2004)。

また、ネズミ亜科が発する超音波の鳴き声についての研究はかなりあって、ラットはくすぐると人間の笑い声に似た鳴き声を発するそうです。超音波の鳴き声の分析から判明した齧歯類の感情については、そのうちハムスター研究所の「心理01」に投稿したいと思っています(ハムスターのマーキングについての研究も盛んで、こちらも折を見て「01行動」に投稿予定です)。

長いのでここで一旦区切ります。

表題:

話を戻します


投稿日時:

「山登魚」さんの引用:

ケージに問題があるときの行動で、うまく計測できたとしても、あまり参考にはならないですよね。

なるほど、実際に飼育した経験がないと分からない知見ですね。
これまで見た文献上、研究室の飼育環境では、意外と餌のバリエーションが豊富でしたが、ケージはジャンガリアンやキャンベル用でも、回し車が入らない位に小さく、巣材に綿を入れたりするなど、お手本にならないような環境だと思うこともあります。研究室では数多くの動物を飼育する関係で、そのスペースが限界なのかなと思いました。

「管理者」さんの引用:

エサの質だけで肥満は解消できないということで、食べ過ぎの原因になるストレスに気を付けましょう。

耳が痛いです。うちのジャンガリアンは先代も今の子も、甘いものはごくたまにビーポーレンを付属のスプーンで1さじあげる程度なのですが、ペレットを食べ放題にしているのもあり、かなり大柄で体重も重いです。

「管理者」さんの引用:

ロボロフスキーハムスターは、パンを食べているときにミルワームを渡すと、すぐにミルワームを受け取りますが、ゴールデンハムスターは同じ状況では受け取ってくれないどころか、嫌そうな顔をされる時があります。

嗜好が異なるペットを色々飼っていると、新鮮なうちに食べきれるだけでなく、誰かが食べなくても他の誰かが食べてくれるので、買ったものが無駄にならなくていいですね。
うちはハムスターを1匹しか飼っていないので、余るとミルワームの床材にするしかないです。

「管理者」さんの引用:

暑くなったり、味の濃い物?を与えると、水を飲んでいるのを見ます。

ハムスターは、野生では夏場も日中涼しい地下にいるから、日本の夏の暑さに弱いのだと思っていましたが、そもそも生息地の砂漠より日本の夏のほうが温度が高いというのは意外でした。
ハムスターにあげられそうな味の濃い物はちょっと想像つきませんが、口の中の水分を持っていかれたのでしょうか。

「管理者」さんの引用:

手術の麻酔が覚めて、完全に覚醒していない状態でも食べたりするんですよね。
ストレスとか関係なく、弱ったら食べたり寝たりして、回復しようとしているのかもしれないです。

しっかり食事を摂れるなら、体を動かす体力もついて、足の筋力の回復も早そうです。
人間は一度入院してしまうと、ベッドでの生活が長く続いて筋力が落ち、ご高齢の方ですと一気に足腰が弱って、車椅子生活になることもありますね。

「管理者」さんの引用:

ホワイトフェイスの個体は5月になると換毛できないからか野良寝していましたが、ノーマルの個体は換毛できているのか、巣箱でぐっすり寝ていました。

ペットのハムスターカラーハムスターについて、興味深い論文がありました。

引用:

N.フェオクチストファ、Y.チェルノヴァ、G.メシュチェルスキー 「フォドプス属(哺乳綱、クリセティナエ亜科)ハムスターの装飾形態:遺伝子系統の分布と毛の変化の特徴の分析」生物学速報レビュー 第3巻 2013年1月 p.57~72

ヨーロッパ、東南アジア、北アメリカのペットショップで、キャンベルハムスター9匹(7つのハプロタイプ)、ジャンガリアンハムスター17匹(6つのハプロタイプ)、及びロボロフスキーハムスター5匹(1つのハプロタイプ)を購入し、得られたmtDNA配列を、自然集団で知られているキャンベルハムスターの63のハプロタイプ、ジャンガリアンハムスターの26のハプロタイプ、及びロボロフスキーハムスターの26のハプロタイプと比較した。
※ハプロタイプ;片方の親から受け継いだ遺伝子の組み合わせのこと。

  • 全ての有色のキャンベルハムスターは、トゥヴァ共和国で捕獲された繁殖用動物を祖先とする、欧米のハプログループのタイプである。
  • 有色のジャンガリアンハムスターのうち、モスクワとサンクトペテルブルクで飼育されているのは、ミヌシンスク盆地で捕獲された動物の子孫であり、ヨーロッパ諸国と東南アジア諸国で飼育されているのは、ノヴォシビルスク州カラスク地区の動物の子孫である。
  • 有色のロボロフスキーハムスターは、ザイサン盆地の動物の子孫であり、そのハプロタイプは野生で捕獲された1匹のハプロタイプと一致している。

カラーハムスターは、自然な色のハムスターとは異なり、正常な毛の状態が乱れている。これは、その薄暗さ、毛羽立ち、フェルトのような質感、そして異なる種類の毛の比率とサイズ特性の変化、毛幹が直角に曲がるまで変形し、上部が裂けること、キューティクルの亀裂、髄質の形状と位置の変化、そして皮質の不均一な発達によって証明されている。これらの破壊的な変化は、カラーハムスターの遺伝的特性に関連していると考えられている。
日本は東アジアに区分されますので、この論文では日本にいるハムスターのルーツは分かりません。
けれども、ゴールデンハムスターに限らず、どのハムスターも気候的、あるいは政治的に立ち入るのが容易でない地域に生息していますので、特定の地域で捕獲された数少ない野生種をルーツとし、ブリーダーによって交配が重ねられた親戚同士であるということは予想できます。

「管理者」さんの引用:

うちのロボロフスキーハムスター(オス)では、1年目の春に急に喧嘩をするようになりました。
ケージを別けたら、急にフレンドリーになりましたが、テストステロンの攻撃性は人間には、向けられないようです。

タイガー期のシマリス(特にオス)は思いきり人間にも攻撃を仕掛けてきますけど、ハムスターはそうではないから飼いやすく、人気があるのですね。
齧歯類のエストロゲンに関する研究も、同種同士の相互作用を観察するものばかりでした。

「管理者」さんの引用:

ペットのハムスターって、明日のオヤツが楽しみで、意地でも起きていそうですよね。

「管理者」さんの引用:

人間が住んでいる家だと、冬場でも野生環境よりあったかいでしょうし、エサにも困らないですし。

原文では「spontaneous daily torpor(自発性の日内休眠)」と書かれていました。環境によって誘発されるのではなく「食べ物がないし、お腹がすくから寝よう」と思って自ら休眠していたとすれば、どんなに寒くても、確かに、「明日もオヤツをもらえるから起きていよう」と思うかもしれません。逆に、同じ気温でも餌が十分でなければ、休眠させてしまう可能性があると思いました。

表題:

キャンベルハムスターの先行文献


投稿日時:

今回から、野生のキャンベルハムスターとジャンガリアンハムスターについて、ウィン=エドワーズ氏とロス氏の論文を2本ずつ紹介していきます。
ウィン=エドワーズ氏は、Phodopus campbelliをジャンガリアンハムスター、Phodopus sungorusをシベリアンハムスターと呼んでいて、このトピックでは名称を書き換えています(以前「野生のジャンガリアンハムスターに名前を付けて個体識別している」と書いたのはキャンベルハムスターのことでした)。
また、以下の論文では野生個体を観察していますが、研究室での実験にはアメリカのプリンストン大学のコロニー出身の個体を用いています。そして、そのコロニーは、国立精神衛生研究所のマイケル R. マーフィー氏から提供された動物を用いて設立されていました(Wynne-Edwards 2011)。これに先立ち、キャンベルハムスターの生態について研究したD.キム・ソーリー氏らの実験(D.Kim Sawrey et al., 1984)でも、マーフィー氏から動物の提供を受けたことを謝辞の中で明らかにしていて、ハムスターの研究者の方々の間でも交流があるのだなと思いました。

引用:

キャサリン E.ウィン=エドワーズ、アレクセイ V.スロフ、アレクサンドラ・ユウ・テリツィーナ「化学シグナル伝達に関する野外研究 : ソビエトアジアにおけるドワーフハムスター(PHODOPUS)の直接観察」リチャード L.ドティ、D.ミュラー・シュヴァルツェ編『脊椎動物における化学シグナル VI』プレナム・プレス 1992年 p,485〜492

キャンベルハムスターの生態と行動にはいくつかの特徴があり、この観察野外調査の実施を可能にしている。
第一に、生息地は非常に開けており、体重20~30gの小型ハムスターを観察することができる。小型哺乳類を直接観察できるほど開けた生息地は、砂漠や乾燥した短草のステップなど、ごくわずかである。
第二に、ハムスターは夜間に追跡するために必要な明るい光を避けず、人間の観察者が20cm以内の草むらに横たわっている間も、邪魔されることなく食べ続ける。
第三に、ハムスターは動きが遅い。小型ハムスターの最大走行速度は、人間の歩行歩幅である(約6.5km/h)。Phodopusの後足は、ネズミ科の他の属とは異なり、比較的短い指骨を持ち、これが走行速度の遅さの一因となっている。同じ生息地において、同じサイズかそれより大きい他の種は、はるかに速く移動し、徒歩で継続的に追跡することは不可能である。
第四に、個体密度が極めて低い。1匹当たりの生息域は3.5~4.0ha(甲子園球場0.91個分~東京ドーム0.85個分)で、この安定した低い個体密度(15年間の捕獲記録における変化率4%未満(Flint, 1966))は、齧歯類の個体群では稀である(Hayward、Phillipson, 1979; Rogovin, Shenbrot、Surov, 1991)。

(シベリア南部のトゥヴァ共和国~モンゴル北西部、新疆ウイグル自治区等に居住する民族である)トゥヴィナ人の食生活は、彼らが飼育する羊に依存している。ゲルは毎年短距離(約0.5km)移動され、8月下旬から6月中旬まではこの地域に人が立ち入ることはない。牛やモンゴルポニーもこの地域を放牧しているが、家畜は全て毎晩囲いに入れられる。我々のキャンプはモンゴル国境のテレ・ショル湖畔にある。
ハムスターの生息地は、開けた砂丘と、キジムシロ属とハマニンニク属の草原が特徴で、直径0.2mから3mを超える、とげのあるカラガナ(ムレスズメ属)の低木が生い茂っている。
ハムスターは、ゴマ油に浸したキビを餌にした円筒形の生け捕り罠、巣穴掘りなど、様々な方法で捕獲された。しかし、大部分のハムスターは巣穴に出入りする際に手で捕獲された。捕獲直後、各個体には無線送信機が腹腔内に埋め込まれた。全ての手術はケタミン(75mg/kg)及びアセプロマジン(7.5mg/kg)麻酔下で実施され、保温により回復期間をおいてから、手術の2時間後または翌日の日没時に解放された。
データの収集のため、観察者は2人1組で作業した。1人が懐中電灯でハムスターを追跡し、マイクロカセットテープレコーダーに直接データを記録する役割を担った。2人目の観察者は、番号付き旗、テレメトリー受信機/アンテナ、電池等の予備品の設置を担当した。観察は2m未満の距離から行われたが、観察者は対象動物が食べている餌の種類を特定するために2m以内に近づくこともできた。1m以上の距離では、後続の観察者は直立姿勢を保った。さらに近づくと、観察者は這ったり横になったりした。

観察は1日24時間継続したが、日中は長距離の移動もマーキングも観察されなかった。
合計5匹のメスが、地図領域内で重複しない行動範囲を維持していた。そのうち3匹のメスは、3匹のオスが訪れたエリア内に就寝用の巣穴を持っていた。1匹はオス6とオス14のみが訪れ、最後の1匹はオス4のみが訪れた。交尾中、オスは発情期のメスの近くや、通常のマーキング境界の外側でマーキングすることがあり、オスが自身のマーキング境界を越えて行った全ての行動は、メスの巣穴への訪問と関連していた。

1990年、2匹の成体メス、ライサとバーバラを、15夜と8夜連続追跡した。観察期間中、ライサは15夜で平均4.1時間、バーバラは8夜で平均2.6時間地上での活動を行い、それぞれこの時間のうち約40%を移動に、20%を食事に、12%を毛づくろいに費やしていた。2匹とも、調査地のあらゆる土壌にマーキングを施すが、生息域には1,050~1,100本の低木があり、茂みの下や草むらの下など、隠れ場所となる場所に集中して配置しているようである(55%と66.1%)。成体メスは、雨による希釈からマーキングを保護することにより、マーキングの寿命を延ばす効果を高めている可能性がある。
各メスのマーキング頻度は午後10時から11時の間にピークを示し、夜間の最初の移動が最も長く、長距離の移動速度を伴うという一貫したパターンを反映している。バーバラの活動レベルが低いため、マーキング速度への有意な影響は観察されなかった。
マーキングの直前(約30秒)と直後の行動を解析すると、移動、食事(頬袋への収集を含む)、毛づくろい、地面を嗅ぐ行動は、行動の70%以上を占めていた。ライサは地下の甲虫の幼虫を狩るのに対し、バーバラは狩らなかったため、掘削スコアが高くなった。バーバラはライサよりも人間の観察者に反応する頻度が高く、嗅ぐ行動と警戒行動のスコアが高くなった。ライサは掘削場所から出発する際に頻繁にマーキングを行ったため、事前掘削スコアと事後移動スコアが高くなった。両メスにおいて、毛づくろいとマーキングは事後マーキングよりも事前マーキングのスコアが高かった(p<0.01)。

成体オスによる腹腺マーキングの空間分布は、重複しない空間利用領域を区切っているように思われ、同種の近隣個体との境界付近に匂いマーキングが集中している。これらの境界が正確にマーキングされていることから、これらのマーキングはオスとオスのコミュニケーション、そして恐らく縄張り防衛に何らかの役割を果たしていることが示唆される。
個体の移動中や、地面に転がりながら発するマーキングのパターンが、フォドプス属の特徴である密集した毛深い足と相まって、歩くたびに独特の匂いを付着させると我々は仮説を立てている。毛づくろいがマーキングよりも先に出現する頻度が高いことから、この香りは各種のマーキングに付加され、経路誘導やコミュニケーションに役立つ追加情報を提供する可能性があることが示唆される。

表題:

キャンベルハムスターの先行文献


投稿日時:

引用:

パトリシア・D・ロス「Phodopus campbelli」哺乳類種 第503号 アメリカ哺乳類学会 1995年6月 p.1~7

本種は、1902年7月に内モンゴルでタイプ標本を採集したチャールズ・ウィリアム・キャンベル(駐中国英国領事)にちなんで命名された。
このハムスターは、当初はジャンガリアンハムスターの亜種として分類されていた。マイヤー(1967)は、キャンベルハムスターとジャンガリアンハムスターの個体群間に、生後発達と行動に差異があることを発見した。キャンベルハムスターとジャンガリアンハムスターの交配は、オスとメスが拮抗することによってほとんど成功せず、オスは不妊となった(Safronova et al., 1967)。キャンベルハムスターの交雑したオスは、オス親の1.5倍の大きさの精巣を持ち、ほとんどの精母細胞で減数分裂が阻害されている(Safronova et al., 1993)。このユージン他(1979) の報告に基づいて、キャンベルハムスターはジャンガリアンハムスターの亜種から地位が格上げされた(Corbet, 1984)。

キャンベルハムスターは、アルタイ山脈、トゥビンスカヤ自治区 (トゥヴァ)、ザバイカリア、モンゴル、内モンゴル (内モンゴル)、及び中国北東部の黒隆江省と河北省の隣接地域等、中央アジアの草原と半砂漠に生息している (Vorontsov et al., 1967; Zimmerman, 1964)。
満州里とダライ・ノル付近で捕獲されたキャンベルハムスターのオス4匹とメス1匹の平均体重は23.4gであった(Zimmerman, 1964)。
キャンベルハムスターは薄明薄暮性で夜行性であり、一年中活動的である(Flint, 1966)。
キャンベルハムスターは、ジャンガリアンハムスターよりも寒冷な気候への適応が劣っている。耐えられる最低気温は、夏季で-31.8℃、冬季で-44.6℃であり、ジャンガリアンハムスターよりも6~10℃高い。
気温が低下すると基礎代謝率は急激に上昇し、-10℃では体温が23.7℃まで急激に低下する(Weiner、Heldmaier, 1987)。この寒冷曝露に対し、ジャンガリアンハムスターのように体を丸めて休んで熱産生と断熱に頼るのではなく、激しく運動し、シェルターへの逃避を試みる(Weiner、Heldmaier, 1987)。両親が気温21℃で飼育した仔(n=19)の生存率は高い(95%、n=107)が、両親が気温4℃で飼育した仔(n=16)の生存率は大幅に低下する(32%、n=78)(Wynne-Edwards、Lisk, 1989)。
繁殖期はトゥヴァでは4月中旬(Flint、Golovkin, 1961)、モンゴルでは4月末または5月初め(Bannikov, 1954)、ザバイカリアでは4月末または5月初め(Nekepilov, 1960)に始まり、生息域全体で9月または10月初めに終わる(Meyer, 1967)。
ザバイカリアでは、繁殖能力のあるメスは少なくとも14gあり、この地域のオスの精子形成は体重20gで始まる。夏季には3~4匹の仔が生まれる。この地域で捕獲された繁殖用のメスの仔は、生後約48日で初産した(Meyer, 1967)。対照的に、トゥヴァ集団由来のメスは、生後35日で初産した。
トランスバイカリアのメスの1腹あたりの平均産仔数は8.2匹であった(Meyer, 1967)。内モンゴル自治区満州里近郊で捕獲された妊娠メスの1匹は、9個の仔を産んだ(Zimmerman, 1964)。

巣は乾いた草(Flint, 1966)と羊毛(Yudin et al., 1979)で作られる。
本種は、北満州バルガ高原の高地ステップ地帯や半砂漠地帯に生息するナガナガヒメドリの巣穴や、大興安山脈の岩場や崖に生息するマンチュリカの巣穴とも共通している(Loukashkin, 1940)。モンゴル高原では、キャンベルハムスターは独自の巣穴を掘るよりも、メリオネス(キヌゲネズミ科の一属)の巣穴を共有する傾向がある(Allen,1940、Thomas, 1908)。
キャンベルハムスターは、カルガンからタブールまでの隊商の通り道沿いでよく見られ(Thomas, 1908)、最も多く捕獲されたのは、ポテンティラ・アルテミシア(チンクエ・フォイル・ニガヨモギ)とイネ科植物・ニガヨモギの草原である(Flint、Golovkin, 1961)。1963年から1968年にかけて行われた6回のモンゴル探検では、キャンベルハムスターの9個体が採集されている。オス1個体はカラガナ草原(標高1,400m)、オス1個体はヨモギ草原(標高600m)、メス1個体はマーモットの巣穴付近の部分的に石や岩で覆われた山岳草原(標高1,650m)、オス5個体とメス1個体は砂地、砂利、草地からなる砂利草原で確認されている(Topál, 1973)。
キャンベルハムスターは人家にも生息し、特に冬季にはモンゴルのパオやより頑丈な建物内で見られる(Flint, 1966)。生息域の北西部では、ロボロフスキーハムスター、バラブキヌゲネズミ、アルタイキヌゲネズミ、オナガキヌゲネズミと共存している。これら4種のハムスターの食性は競合を回避するのに十分なほど異なっている(Flint、Golovkin, 1961)。
キャンベルハムスターの生息域はロボロフスキーハムスターの生息域とかなり重複している(Flint, 1966)ものの、両種は直接接触することはない(Vorontsov,1967)。キャンベルハムスターは、安定した土地(Vorontsov, 1960)や砂漠ハムスターが避ける粘土質の土地(Flint, 1966)に生息し、半砂漠地帯やステップ地帯、そしてモンゴルの周期的に乾燥した干潟にも生息している(Argyropulo, 1933; Flint, 1966; Hamann, 1987; Schmid et al., 1986)。
キャンベルハムスターの食性は分布域によって異なる。トランスバイカリア個体群の食性では51種の植物が確認されており、中でもイネ科のバンチグラス属、アリウム(ネギ属)、アイリス・ルテニア(アヤメ属)、アイリス・フラビッシマ(アヤメ属)等が重要となる。一方、トゥヴァ個体群の食性ではわずか10種の植物が確認されている。その中でも特に重要なのが、キジムシロ属とハマニンニク属である(Flint, 1966)。
捕食動物には、ワシミミズク、ソウゲンワシ、チョウゲンボウ、セイカーハヤブサ、コサックギツネ等が含まれる(Brom, 1952; Lipajev、Tarrasov, 1952; Peshkov, 1957)。トランスバイカリア南東部では、夏季に52匹のソウゲンキツネの胃の内容物のうち、キャンベルハムスターの死骸が7.7%を占め、冬季には38匹のソウゲンキツネの胃の内容物のうち、2.6%を占めていた(Heptner、Naumov, 1974)。
全ての自然集団において、メスの数はオスより多い。オスは移動性が高いため、リスクが高くなる(Meyer, 1967)。トゥヴァ共和国では、メスの行動圏は重複しないが、複数のオスが訪れる地域と重複することがある。オスは交尾のために1匹以上のメスを訪れることがある(Meyer, 1967; Wynne-Edwards et al., 1992)。

表題:

ジャンガリアンハムスターの先行文献


投稿日時:

訂正と補足です。
菅理者様のカチカチ音→管理者様
「01行動」に投稿予定→「行動01」
中国北東部の黒隆江省→黒竜江省
砂漠ハムスターが避ける粘土質の土地→ロボロフスキーハムスター
ロス氏はPhodopus sungorus をシベリアンハムスター、Phodopus roborovskiiを砂漠ハムスターと呼んでいて、直すのを見落としていました。

引用:

パトリシア・D・ロス「Phodopus sungorus」哺乳類種 第595号 アメリカ哺乳類学会 1998年12月、p.1~9

ジャンガリアンハムスターの体幹は短く、コンパクトで、頑丈である。外部測定範囲(mm)は、頭胴長が70~90、尾長は5~15。体重はオスで19~45g、メスで19~36gである(Kryltsov、Shubin, 1964)。
本種は、1876年には、ザレフシャン地方とホッジト周辺地域を除くトルキスタン全域の低地で広く見られた(Severtzoff, 1876)。西シベリアやカザフスタン東部の農耕地で発見されており、分布域の北西部では草地の草原や白樺林にも見られる(Kryltsov、Shubin, 1964)。また、ロシアのクラズノヤルスク地方のハキシ及びミヌシンスクのエニセイ川沿いの乾燥ステップ、小麦畑、アルファルファ畑、森林の小規模畑に生息している(Meyer, 1967)。

ジャンガリアンハムスターは夜行性で薄明薄暮性であり、一年中活動している。7匹のジャンガリアンハムスターの観察によれば、59%の時間を睡眠に費やし、睡眠のうち67%は日中で、43%は夜間であった(Deboer et al., 1994)。冬季には、巣穴から少なくとも300m離れた場所で餌を探している様子が観察されており、夜間に-40℃という低温下で捕獲された例もある(Flint, 1966)。
気温が20℃未満のとき、ジャンガリアンハムスターは後肢を前にかがめて休息し、頭と前足を腹側の毛皮の中に隠し、毛皮は均一にふわふわと膨らんでいる。寒冷にさらされている間、この姿勢は散発的な活動のみで維持される。気温が30℃を超えると、ジャンガリアンハムスターは腹面を平らにし、四肢を横に広げて休息する。毛皮はふわふわではなく、密集しており、多数の「換気」のための隙間が見られる(Heldmaier, 1975)。
ジャンガリアンハムスターは、秋の日長減少にさらされると、生殖腺が退行して換毛が始まり、熱産生能力が増大するとともに、日内休眠、摂食量の減少、体重減少(飼育下では30%減)が誘導される(Figala et al., 1973 ; Hoffmann, 1973 ; Steinlechner et al., 1983)。日長に対する反応は規則的でなく、概日リズム(体内時計)とは異なる、遺伝的な機能システムによって制御されている(Lynch et al., 1989)。
繁殖機能を維持するために必要な日長は、約13時間(Hoffmann, 1982)や14~16時間(Duncan et al., 1985)と様々である。
ジャンガリアンハムスターは、-35℃の温度に数時間さらされても体温を36.1~37℃に維持することができる(Weiner、Heldmaier, 1987)。自然条件下では、冬季の自発的な日内休眠は10月に始まる(Heldmaier、Steinlechner, 1981a)。周囲温度が23℃以下になると、朝方に休眠が始まり、4~8時間持続する(Heldmaier、Ruf, 1992; Ouarour et al., 1991)。
8L:16D(8時間点灯:16時間消灯)で20℃に飼育されたジャンガリアンハムスターは、休眠中、一定の体温(25~13℃)が維持された。休眠は、夜間になる前に代謝率が急速に増加し、体温が元に戻るまで約40分かかった。
毎日の休眠発作の頻度は、短日の環境に長くさらされるほど増加し、130日目に最大に達した(Heldmaier、Ruf, 1992)。28週目以降は、ハムスターが短日で飼育されていても休眠発作はなくなった。全てのオスは12~28週の間に少なくとも1回は休眠状態に入ったが、メス7匹のうち3匹は入らなかった。休眠期間中の平均エネルギー節約量は56.8%、24時間では11.9%、休眠に入ってから16週間でオスが2.4%、メスが1%であった(Kirsch et al., 1991)。
自然界では、休眠は春の換毛が始まると終了する(Heldmaier、Steinlechner, 1981a)。温熱中性や過剰な餌は冬季休眠を予防しない(Heldmaier、Steinlechner, 1981a)。
しかし、18℃未満の気温で飼育された個体において、多価不飽和脂肪酸を多く含む食事(くるみや松の実等の種実類、豆や豆製品、卵)は、休眠の発生を増加させる可能性がある(Geiser、Heldmaier, 1995)。気温の低下だけでは休眠の頻度に影響を与えないが、低温と短い日長は休眠発作の発現を加速させる可能性がある(Ouarour et al., 1991)。飼育下のジャンガリアンハムスターでは、松果体を介さない夏季休眠が、餌の制限(Ruby et al., 1993)や糖代謝の阻害(Dark et al., 1996)によって誘発される。

繁殖期は4月から5月に始まり、9月まで続く(Flint, 1966)。カザフスタンでは、メスの最大60%が冬季に繁殖する可能性がある(Kryltsov、Shubin, 1964)。クラスノヤルスクでは、妊娠したメスの体重は少なくとも20gであった。この地域で飼育されたメスの子孫は、生後4~5ヶ月で最初の出産を行った(Meyer, 1967)。
クラスノヤルスクで採集された19匹のメスにおける胚の平均数は6.4個、胚痕の平均数は5.1個であった(Meyer, 1967)。シベリアのカラスクで採集されたジャンガリアンハムスターの子孫であるメスの平均産子数は、オスがいる場合は5.0匹、オス親がいない場合は5.3匹とほぼ同じ数で、オス親が子育てに協力するかどうかは仔の数と関連がなかった(Wynne-Edwards、Lisk, 1989)。離乳後の幼体のオス・メス比は1.0:1.1であった(Lerchl, 1995)。

巣穴の構造は生息域によって様々である(Yudin et al., 1979)。カザフスタンでは、巣穴は4~6つの入口を持つ垂直の通路で構成されている。巣室は地表から約1m下に位置する(Vinogradov、Argiropulo, 1941)。ハカシアでは、地表から約35cm下に、主トンネルに繋がる複数の水平及び垂直の通路が存在する。巣は夏季には苔が、冬季には動物の毛が敷かれ、冬季には1つの入口のみが使用される。
コイバルスク草原では、ジャンガリアンハムスターはマーモットなどの哺乳類の巣穴に住み着き、自ら巣穴を掘ることは稀である(Yudin et al., 1979)。半自然環境下でジャンガリアンハムスターが構築した巣穴は、屋外で観察されるものよりも相対湿度が高く、温度変動が小さいという特徴があった(Schierwater、Klingel, 1986)。

食性は主に野生植物(主にイネ科)の種子であるが、昆虫、特にバッタも食べる(Kryltsov、Shubin, 1964)。40個の胃のうち32個の胃の内容物に種子が、11個の胃には種子以外の植物体部分が、15個の胃には昆虫が検出された。冬季には、ジャンガリアンハムスターが馬の糞便中の未消化の穀物を摂食しているのが観察された(Yudin et al., 1979)。飼育下では、長日条件下では炭水化物の摂取量が脂肪を上回り、脂肪はタンパク質を上回っていた。短日環境にさらされると、炭水化物とタンパク質の消費量が増加し、脂肪の消費量が減少する(Fine、Bartness, 1996)。

個体群密度は変動する。1963年にコイバルスク草原で捕獲された151頭の小型哺乳類のうち、31.8%がジャンガリアンハムスターであった(Yudin et al., 1979)。捕食動物にはイタチ(Mustela nivalis-Zverev, 1931)等がいる。

表題:

キャンベルハムスターとジャンガリアンハムスターの比較


投稿日時:

引用:

キャサリン E.ウィン=エドワーズ、アレクセイ V.スロフ、アレクサンドラ・ユウ・テリツィーナ「Phodopus属における内因性活性の違い」哺乳類学ジャーナル 第80巻 第3号 アメリカ哺乳類学会 1999年8月 p,855~865

ジャンガリアンハムスターとキャンベルハムスターは、極寒と水不足に耐えるため、優れた断熱性と球形、高濃度の尿、低い蒸発性といった形態学的・生理学的適応を共有しており、成体時の体重は20~35gとほぼ同等である(Flint, 1966; Heldmaier, 1975; Meschersky, 1993; Scribner Wynne-Edwards, 1994a; Trojan, 1977)。しかし、キャンベルハムスターの生息地である半砂漠地帯は、ジャンガリアンハムスターの生息地である短草ステップ地帯に比べて降水量が50%少なく、季節降雨期間も短く、真冬の気温も低い。キャンベルハムスターの生息地で利用できる資源がより少ないとするならば、採餌活動のために巣穴からより遠くまで移動し、地上で過ごす時間が長くなると仮説を立てた。この仮説を検証するため、3年間連続して野生における各種の観察結果を分析した。

ハムスターは、捕獲器か手作業で捕獲した。各個体は、ケタミン(75mg/kg)及びアセプロマジン(7.5mg/kg)麻酔下で腹腔内無線送信機を装着し、手術後1時間以内に解放された。テレメトリーを用いてハムスターの位置特定を行い、その他のデータはヘッドランプと懐中電灯を用いた直接観察によって収集された。地上での活動はマイクロカセットレコーダーに記録され、行動していた場所に旗を立て、日中にそれらの旗の位置を地図上に記載した。パラメトリック分散分析(ANOVA)を実施し、事後検定を実施した。
活動における種差は、内因性(生息地の環境の差ではなく、生物の内部システムから発生するもの)であるという仮説を検証するため、実験室において、気候(18℃±1)と光周期(14L:10D)が同一で、餌(ピュリナ・実験室用フード)と水が自由に摂取できる環境下で、回し車の使用状況を比較した。連続5日間、1時間ごとの回し車の回転数を合計し、算出した。

1988年から1990年にかけて、キャンベルハムスター24匹とジャンガリアンハムスター11匹が調査された。活動は個体別及びハムスター1夜(キャンベルハムスターではオス59夜、メス77夜、ジャンガリアンハムスターではオス35夜、メス18夜)に基づいて分析された。
キャンベルハムスターは、オス・メスともに日没の1.52±0.20時間後から地上での活動を開始し、日の出の1.86±0.25時間前まで活動を継続した(P<0.0005)。これに対し、ジャンガリアンハムスターは、オス・メスともに、日没の3.02±0.30時間後から日の出の3.86±0.40時間前まで活動した。暗くなる前に出てきたジャンガリアンハムスターはおらず、夜明け後に活動したジャンガリアンハムスターは少数(11.3%)であった(出現についてはP<0.0001、巣穴への帰還についてはP<0.02)。
地上での活動時間は、キャンベルハムスターがオス・メスともに222.0±31.1分/夜(巣穴内での行動を含めた活動時間の65%)で、ジャンガリアンハムスターがオス・メスともに83.4±43.0分/夜(同40%)であった(P<0.05)のと比べると、2.5倍以上であった(種の差についてはP<0.0001、性別の差についてはP=0.44)。
一晩の移動距離は、キャンベルハムスターのオスが1,641±348m、メスが822±195mと、オスのほうが長くなった(P<0.05)。一方、ジャンガリアンハムスターのオスは254±38m、メスが283±56mと、差は見られなかった(P=0.67)。
巣穴からの移動先までの距離については、キャンベルハムスターのオスが370±92m、メスが131±19mと、3倍もの差が開いた(P<0.01)。それに対し、ジャンガリアンハムスターのオスは71±13m、メスは64±12mと、差がなかった(P=0.69)。
移動速度についても、ジャンガリアンハムスターのオスは4.1±0.8m/分、メスは4.1±1.0m/分と、同じ速度(P=0.99)で移動し、キャンベルハムスターのメスと大きな差はなかった(6.1±0.7 m/分、P=0.14)。そのため、地上で活動する時間が長いことが、ジャンガリアンハムスターのメスと比較してキャンベルハムスターのメスの総移動距離が長いことを説明できる。
対照的に、キャンベルハムスターのオスの平均移動速度はメスの2倍(11.4±0.6 m/分、P<0.0001)で、ジャンガリアンハムスターのオス・メスのほぼ3倍であった。つまり、キャンベルハムスターのオスはメスと比べて活動時間に変わりはなかったが、移動速度がはるかに速く、毎晩の移動距離も長かったのである。

回し車走行活動の実験室測定によっても、種間に差異が確認された。両種とも、回し車の使用は光周期と関連していた。しかし、キャンベルハムスターはジャンガリアンハムスターよりも消灯前に走行を開始する傾向が強かった(P<0.0001)。キャンベルハムスター(メス7匹) では回し車走行は常に消灯前に始まったが、ジャンガリアンハムスター(メス6匹)では90%の確率で消灯後に回し車走行が始まった。回し車走行のピーク回転数は、キャンベルハムスターのメスが5,412±260回転/時、ジャンガリアンハムスターが5,206±213回転/時と、ほぼ同等であった。24時間におけるキャンベルハムスターの回し車回転数は、ジャンガリアンハムスターの回し車回転数より42%高かった(P<0.0001)。
実験室における種間の回し車走行の差は、野外で測定された地上活動持続時間や移動距離の差よりも小さいが、これらの結果を裏付けている。したがって、制御された条件下では、キャンベルハムスターはより早く走り始め、より長く走り続け、1日の終わりまでにより多くの距離を走った。

両種のメスにとって、地上で過ごす時間が長いほど、同じ速度で移動できる距離が長くなる。したがって、活動が早くなること、毎晩地上にいる時間が長いこと、各遠征の期間が長いこと、各遠征の過程で巣穴からの距離が長いことは、キャンベルハムスターにおける資源獲得にはより広い行動圏とより多くの採餌努力が必要であったという証拠として解釈できる。
キャンベルハムスターのオスについては、採餌活動以外の行動、すなわち社会的交流や交尾相手を探す時間の増加が、活動パターンの重要な決定要因であったと考えられる。キャンベルハムスターのメスのマーキング範囲は重複しておらず、オスが訪れる広大な範囲よりもはるかに狭かった(Wynne-Edwards et al., 1992)。その広い範囲には、複数のメスの就寝用の巣穴が含まれており、他のオスのマーキング範囲を侵食していた(Wynne-Edwards et al., 1992)。
さらに野生では、キャンベルハムスターのオスは、メスがいないときには子どもと単独で過ごし、出産巣穴で離乳した子どもに餌を与える(Wynne-Edwards, 1995)。キャンベルハムスターでは、メスの活動は既に夕暮れから夜明けまでのほとんどの時間にわたっており、子育てを成功させるには、過酷な環境から十分な栄養分と水分を得るために、2匹目の成体が必要となる可能性がある(Khokhlova et al., 1997)。

野生のフォドプス属(ジャンガリアンハムスター、キャンベルハムスター、ロボロフスキーハムスター)に関する先行文献の紹介は、以上で区切りを付けたいと思います。
なお、チャイニーズハムスターについては、論文の絶対数が少ないのと、内容がほぼ医学系のもので、野生の生態以前に、一般的な情報すら乏しい状況でしたので、ここでは割愛させて頂きます。

表題:

Re: キャンベルハムスターとジャンガリアンハムスターの比較


投稿日時:

「山登魚」さんの引用:

けれども、流行が終わった犬種のように、人気のない種類や毛色に生まれたハムスターの行く末が気掛かりです。

犬種ほど差がないし、私みたいな飼い主がいるので、元気なら売れると思いますよ。

「山登魚」さんの引用:

もしペットショップで見つけてそんな風に鳴かれたら、連れ帰ってしまいそうです。

寂しがりなので、かなり懐きますよ。
それだけに、最後が可哀想で飼えないんですよね。

「山登魚」さんの引用:

人間には超音波で話しかけても聞き取れないので、何か肯定的な意思でコミュニケーションを取りたい時には短音で答えていたのかなと思いました。

私から見えないところにいるときは鳴いて、ケージから出ているときは、私の前に立ちはだかってましたね。
ゼスチャーでもコミュニケーションできるので、ハムスターに比べてだいぶ楽でしたけど。

「山登魚」さんの引用:

動物に好かれる管理者様が威嚇されるなんて珍しいですね。

そういえば、友達と一緒だったんですが、確実に私に威嚇してましたね。
私なら何か伝わると考えたのか、逃げられない相手だと思ったのか、ハムスターの臭いがしていたとか。

「山登魚」さんの引用:

カチカチ音は人間にも通じると思って鳴らしていると思います。

ハムスターはよそを向いていることがありますが、リス系は相手の目を見てカチカチ音を鳴らしますよね。

「山登魚」さんの引用:

菅理者様のカチカチ音の再現が認識されていなかったか

歯並びが悪いし、ハムスターほど早くならせないです。

「山登魚」さんの引用:

これは経験則による知見なのか、甘えの感情を伴って「歯をカチカチ鳴らす」例を示した論文は見つかりませんでした。

眠い時にうるさくすると鳴らされることが多かったし、近づいてきた方が確実ですから、甘えは違うような気がしますね。

「山登魚」さんの引用:

ラットはくすぐると人間の笑い声に似た鳴き声を発するそうです。

本当なら聞きたいですね!
そういえばタイリクモモンガの鳴き声が、笑い声に聞こえなくもない音でしたね。
「毛美グヮ」がモモンガになったという由来と、深夜の森の中で聞くと妖怪だと思われたという話が、しっくりくるような音でした。
ちなみに口ではなく、腹筋を使って鳴いてましたね。おそらく発情期にだけ使う鳴き声で、数回しか聞いたことがないですが。

「山登魚」さんの引用:

ペレットを食べ放題にしているのもあり、かなり大柄で体重も重いです。

食べて太るのは当たり前で、それができるというのは健康な証拠でもあるし、私(人間)が胃腸が悪く太れないので、肥満に対してポジティブですね。
けど、老化を早めてしまうので、限度は必要ですが。

「山登魚」さんの引用:

ハムスターにあげられそうな味の濃い物はちょっと想像つきませんが、口の中の水分を持っていかれたのでしょうか。

微量か欲しがった時にしか与えないですが、味の濃い物は、人間用の食べ物のことですね。
砂糖が少しでも入っていると、ハムスターからするとかなり甘いですしね。

「山登魚」さんの引用:

カラーハムスターは、自然な色のハムスターとは異なり、正常な毛の状態が乱れている。

くせ毛程度の話ではないですからね。
カラーハムスターに飛びつく人は、自分のイメージの飼い方をしてしまいがちなので、余計に体調を崩しそうですし。

「山登魚」さんの引用:

齧歯類のエストロゲンに関する研究も、同種同士の相互作用を観察するものばかりでした。

根本は生存本能なので、人間が自分にとって便利な存在なら、人間に攻撃的にならないような気もするんですよね。
リスのタイガー期は、エサの保管場所などに飼い主が近づかなければ、フレンドリーなのでしょうか?

「山登魚」さんの引用:

「食べ物がないし、お腹がすくから寝よう」と思って自ら休眠していたとすれば

そこだけ聞くと、可哀想な子ですよね。
何にせよ、エサが切らさないように飼いましょう。

「山登魚」さんの引用:

第一に、生息地は非常に開けており

夜行性でも保護色が大切で、隠れることに長けていると。

「山登魚」さんの引用:

第二に、ハムスターは夜間に追跡するために必要な明るい光を避けず、人間の観察者が20cm以内の草むらに横たわっている間も、邪魔されることなく食べ続ける。

自分にとって脅威でないのなら、隙のある行動も見せられるくらい、環境の変化に順応できると。

「山登魚」さんの引用:

第三に、ハムスターは動きが遅い。

これも逃げるより隠れることに特化していると。

「山登魚」さんの引用:

第四に、個体密度が極めて低い。

天敵より同種が近くにいる方が、ストレスなんですかね。
東京ドームより広い部屋に住んでいる人はいないと思うので、慣れないうちは単独飼育ですね。

「山登魚」さんの引用:

しかし、大部分のハムスターは巣穴に出入りする際に手で捕獲された。

「ハムちゃん逃げて!」

「山登魚」さんの引用:

ライサは15夜で平均4.1時間、バーバラは8夜で平均2.6時間地上での活動を行い、それぞれこの時間のうち約40%を移動に、20%を食事に、12%を毛づくろいに費やしていた。

活動時間に関してはペットのハムスターと近いですが、野生個体が移動に費やした1~2時間を考えると、ペットの運動量はかなり少ないですね。特に1歳を超えると、あまり走らなくなりますからね。

「山登魚」さんの引用:

同種の近隣個体との境界付近に匂いマーキングが集中している。

ペットでも馴れていないと、ケージの周りに臭い付けしますね。

「山登魚」さんの引用:

キャンベルハムスターは人家にも生息し

現地じゃ害獣なんですかね?

「山登魚」さんの引用:

コイバルスク草原では、ジャンガリアンハムスターはマーモットなどの哺乳類の巣穴に住み着き、自ら巣穴を掘ることは稀である(Yudin et al., 1979)。

マーモットの巣穴だと、結構大きな穴ですよね。

「山登魚」さんの引用:

一晩の移動距離は、キャンベルハムスターのオスが1,641±348m、メスが822±195mと、オスのほうが長くなった(P<0.05)。一方、ジャンガリアンハムスターのオスは254±38m、メスが283±56mと、差は見られなかった(P=0.67)。

一晩の移動距離や巣穴からの移動距離、移動速度を見ると、ジャンガリアンハムスターの方がペット向きですね。

フォーラムの評価機能を利用すると、必要な記事を見つけやすくなるなど、閲覧と管理に影響します。
そのことで、他の飼い主のサポートができるだけでなく、より深く話し合えるきっかけになります。
表題:

Re: キャンベルハムスターとジャンガリアンハムスターの比較


投稿日時:

「管理者」さんの引用:

犬種ほど差がないし、私みたいな飼い主がいるので、元気なら売れると思いますよ。

そういえば、管理者様の初代の子のように、飼育放棄された子を引き取られたユーザーの方もいましたし、捨てられていた子や脱走した子を拾って育てるケースもありましたね。

「管理者」さんの引用:

私から見えないところにいるときは鳴いて、ケージから出ているときは、私の前に立ちはだかってましたね。
ゼスチャーでもコミュニケーションできるので、ハムスターに比べてだいぶ楽でしたけど。

あの小さな体で人間の動きを食い止められると思っていたり、ジェスチャーだけで会話が成り立っていたりするところを、考えるだけで可笑しいです。

「管理者」さんの引用:

寂しがりなので、かなり懐きますよ。
それだけに、最後が可哀想で飼えないんですよね。

次に飼うとしたら、前の子と同じ思いは絶対にさせたくない、という気持ちは、いつも私の中にあります。
私の場合は、正しい情報が乏しい中での飼育でしたから、今なら格段適切にシマリスを飼えそうですけど、管理者様の場合、持てる全ての知識と経験、医療技術を尽くして共に病と向き合った時間でしたから、その重みは比較にならないです。

「管理者」さんの引用:

私なら何か伝わると考えたのか、逃げられない相手だと思ったのか、ハムスターの臭いがしていたとか。

どれもありそうですね。

「管理者」さんの引用:

ハムスターはよそを向いていることがありますが、リス系は相手の目を見てカチカチ音を鳴らしますよね。

私はリス園に行っても歯を鳴らされたことがなくて、どこを見て鳴くのか観察できたことがないです。動物になめられていて、相手にされていなかったのかも知れません。

「管理者」さんの引用:

眠い時にうるさくすると鳴らされることが多かったし、近づいてきた方が確実ですから、甘えは違うような気がしますね。

その様子を伺うと、やはり歯を鳴らす時は、単に威嚇の意思表示しかないかも知れませんね。マーモット(後述)も歯をカチカチ鳴らして威嚇するようです。

「管理者」さんの引用:

本当なら聞きたいですね!
そういえばタイリクモモンガの鳴き声が、笑い声に聞こえなくもない音でしたね。
「毛美グヮ」がモモンガになったという由来と、深夜の森の中で聞くと妖怪だと思われたという話が、しっくりくるような音でした。
ちなみに口ではなく、腹筋を使って鳴いてましたね。おそらく発情期にだけ使う鳴き声で、数回しか聞いたことがないですが。

私は研究者の方々が真剣にラットの子をくすぐり、それを記録する様子を想像して笑ってしまいました。
齧歯類では、現在推定2923種のうち約50種以上で超音波発声(USV)が報告されていて(Farwell, 2024)、ジリスもモモンガもハムスターも超音波発声が確認されているのですが、いくら鳴き声を言葉や図で表現した論文を読んでも、全くイメージが湧かないです。

モモンガが昔、毛美(モミ)とも呼ばれていたことは、今回初めて知りました。
Animal Divercity Webによれば、タイリクモモンガ(Pteromys volans)のオスは、飼育下では独特の鳴き声を発し、メスを追いかけるとのことです。
うちでは、リスの発情期の小鳥のようなピロピロ、ホロホロといった可愛い鳴き声を、毎年聞いていました。

「管理者」さんの引用:

食べて太るのは当たり前で、それができるというのは健康な証拠でもあるし、私(人間)が胃腸が悪く太れないので、肥満に対してポジティブですね。
けど、老化を早めてしまうので、限度は必要ですが。

管理者様の胃腸とハムエッグができるだけ長く維持されることを願うばかりです。
私はこの頃筋肉が落ちて基礎代謝が低下したようで、現状、食事の量で調整するようにしています。

「管理者」さんの引用:

微量か欲しがった時にしか与えないですが、味の濃い物は、人間用の食べ物のことですね。
砂糖が少しでも入っていると、ハムスターからするとかなり甘いですしね。

人間の食べ物を欲しそうにしていると、つい分けてあげたくなり、喜んで食べる姿を見ると、つい量や回数を増やしてしまい、といった無限ループに陥らないよう、強い自制心が必要なのですね。私は甘やかしそうなので止めておきます。

「管理者」さんの引用:

カラーハムスターに飛びつく人は、自分のイメージの飼い方をしてしまいがちなので、余計に体調を崩しそうですし。

ハムスターをお迎えするきっかけは何であれ、自分の接し方を客観視できる情報にアクセスして頂き、より良い飼い方を目指す仲間になって頂きたいですね。

「管理者」さんの引用:

根本は生存本能なので、人間が自分にとって便利な存在なら、人間に攻撃的にならないような気もするんですよね。
リスのタイガー期は、エサの保管場所などに飼い主が近づかなければ、フレンドリーなのでしょうか?

大野瑞絵氏の飼育書(『シマリス 完全飼育』誠文堂新光社 2022年4月)によれば、シマリスには冬眠する種類と冬眠しない種類があり、冬眠する能力を持つシマリスは、実際に冬眠状態になるがどうかに関わりなく、その時期になると近くにいる生き物を排除しようとする意識が極めて強くなり、攻撃してくるのではないかとのことです。

冬眠前に貯蔵した餌、さらに言えば自分の命を守るための本能的な攻撃行動だと考えると、餌に近付かなければ大丈夫だとは思いますけど、ケージの中も、ケージを設置している部屋もシマリスの縄張りでしたから、うちでは例え餌を継ぎ足すためだとしてもケージに手を入れればすかさず襲い掛かられ、外に出せば、家族が部屋に入った瞬間に襲い掛かられるといったこともありました。
スイッチが入っている期間は理性が吹っ飛んで、常に臨戦態勢になってしまうようで、やはりこの期間は接触を最低限にするよう心掛けるのが、うまく乗り切るやり方だと思いました。

「管理者」さんの引用:

何にせよ、エサが切らさないように飼いましょう。

はい。餌も沢山あれば何でも良いのではなく、栄養バランスや固さがその子の状態に合ったものを、ですね。

「管理者」さんの引用:

東京ドームより広い部屋に住んでいる人はいないと思うので、慣れないうちは単独飼育ですね。

全く、そこまで縄張りが広いとは思っていませんでした。ゴールデンハムスターについても、たまたま放棄された巣穴が118m先にあっただけで、戦争や害獣として追われる環境でなければ、本来の縄張りはもっと広かったのかも知れないと思いました。

「管理者」さんの引用:

「ハムちゃん逃げて!」

後述のマーモットの巣穴の調査では、100×100mまたは80×80mの大型落とし穴トラップや金網の漏斗トラップ、シャーマントラップ等が広範囲に設置され、大掛かりな方法で捕獲されているのに対し、ハムスターは手で簡単に捕まってますね(ちなみにそのマーモットの捕獲罠には、他の小型齧歯類と一緒に、ロボロフスキーハムスターもかなり掛かっていました)。

「管理者」さんの引用:

野生個体が移動に費やした1~2時間を考えると、ペットの運動量はかなり少ないですね。特に1歳を超えると、あまり走らなくなりますからね。

うちのジャンガリアンもそろそろ1歳です。お迎え当初は、夜中に回し車の音がするという家族から報告を受けましたが、その後耳が慣れたのか、走らなくなったのか、報告は聞かなくなりました。

「管理者」さんの引用:

ペットでも馴れていないと、ケージの周りに臭い付けします。

そういえば、フォーラムの相談でも、トイレでおしっこをしない場合(ロボロフスキーを除く)、ケージ中央ではなく、巣箱や餌入れ等、ケージの端ですることが多かったのは、トイレを覚えられないのではなく、敢えて狙ってマーキングに使っていたのですね。

「管理者」さんの引用:

現地じゃ害獣なんですかね?

レッドリストによれば、ジャンガリアンハムスターは、一部の地域では個体数が多く、農作物の害獣にもなる、と書かれています。
キャンベルハムスターやロボロフスキーハムスターは、生息域が砂漠やステップ、山岳地帯といった未開発地域であることから、農地への食害は大きな問題になっていないようです。
とはいえ、中国では、ハムスターを含めた害獣対策に使用される薬の効果と、農地への影響を調査した報告がありました(一読して控えを取らなかったため、すぐに出典を示せないのですが)。

「管理者」さんの引用:

マーモットの巣穴だと、結構大きな穴ですよね。

はい。マーモットには色んな種類があって、ジャンガリアンハムスターと生息地が重なるマーモットは、シベリアマーモット(Marmota sibirica)だと思われます。

引用:

ブヤンデルガー・ス​​ーリ、オトゴンバヤル・バータルガル、バダムドルジ・バヤルトグトク、リチャード P.リーディング「モンゴルマーモット(Marmota sibirica)によるモンゴルの小型哺乳類群への生態系工学的影響」アジア太平洋生物多様性ジャーナル 第15巻第2号 2022年6月 p.172〜179

上記によれば、シベリアマーモット(モンゴルマーモット)は比較的大型の社会性齧歯動物(体長50~60cm、体重6~8kg)で、モンゴルのステップ地帯に生息します。
巣穴はそれぞれ異なり、冬眠場所(深さ約1~3m)、夏眠巣穴(深さ約1.7m)、逃避巣穴(深さ約1m)として機能し、全ての入り口の直径は幅約32×高さ約23cmです。

「管理者」さんの引用:

天敵より同種が近くにいる方が、ストレスなんですかね。

「管理者」さんの引用:

一晩の移動距離や巣穴からの移動距離、移動速度を見ると、ジャンガリアンハムスターの方がペット向きですね。

この詳細については縄張りのトピックに書き込もうと思っているのですが、ウィン=エドワーズ氏の実験(2013)によれば、キャンベルハムスターのオスは、劣位の同種に対してかなり攻撃的で、頭部を狙った致命的な攻撃を仕掛けて相手に重傷を負わせ、実験が中断される事案もありました。従って、キャンベルのオスにとっては、天敵も同種も、同じくらいストレスなのではないかと思います。
ジャンガリアンはそこまでではなかったので、恐らく同種より天敵のほうがストレスになり、縄張りの広さ的にも性格的にもペット向きだといえそうです。