飼い主とハムスターたちの知識の図書館。

毛色の遺伝とパンダマウス

ペットショップで時々見かけるマウス。同じ鼠ですが、ハムスターとは違った魅力があります。
目が良いのか、ハムスターより目線が合うことが多くて、買って帰った方がいいのか考えてしまうことがあります。

投稿日時:
投稿者:USER0054

[USER0054]です.

大脱線です.

アニファNo.8を購入しました(マウスの特集があったので).

1.パンダマウス?
パンダマウス(変な名ですね)ですが,実はこれと同じマウスを10数年前に飼育していました(一応仕事で).昔,指導教官であった教授(今はもちろん退官してます)がデンマークのある大学と共同研究をした際に,ついでの折にもらったものです(もちろん当時は研究用系統ではありませんでした).

マウス(ハツカネズミ)ですが,学名をMus musculusといいます.
ユーラシア大陸で西ヨーロッパにすむ亜種(種の下の分類)をMus musculus domesticus,日本にすむ亜種をMus musculus molossinusといいます.
両亜種は交配可能です.

研究用マウスですが,その起源はdomesticusが中心となり,日本産ハツカネズミmolossinusの遺伝子が少し混入していることがわかっています.江戸時代に日本(および中国)では愛玩用としていろいろな毛変わり(要するに突然変異です)のマウスが飼育されていました.これらのマウスが海外に流出し,西ヨーロッパを起源とするマウスに交配され,のちに研究用系統が育成されていったものと推定されています(実際にはもっと複雑ですが,できるだけ単純化して書いています).

パンダマウスに対して遺伝学的な解析を行った結果,他の研究用系統とは異なり,日本産ハツカネズミの遺伝的特徴をかなり強く持っていることがわかりました.パンダマウスは体がかなり小さいですが,これは日本産のハツカネズミの特徴のひとつでもあります.

このマウスですが,近交系化してJFという名前(Japanese Fancyの略で教授が命名)をつけ,研究用系統として国際登録しました.

2.マウスの写真
アニファNo.8には,毛色突然変異のマウスの写真がたくさん掲載されています.一部の毛色に関しては,研究用系統の突然変異遺伝子の呼称がそのまま用いられています(例えばブラック&タン).研究用の系統がペットとして流出していることがよくわかります.
#もともと研究用マウスの起源は愛玩用マウスだったのですから,「あいみたがい」の関係であるといえます.

ところで,毛色の説明に誤りがあり,ブラウン(野生色)となっていますが,野生色はblack agoutiに対応します.遺伝子記号(毛色に関与する2遺伝子座である,a遺伝子座とb遺伝子座で簡単に説明ができます)で書くと,近交系では,
AA BB:black agouti(いわゆる野生色)
aa BB:black(ブラック)
AA bb:brown agouti(シナモン)
aa bb:brown(チョコレート)
となります.
それともペット業界では,ブラウンを野生色と読んでいるのでしょうか?研究用の俗称ではブラウンはチョコレートと呼ばれていました.

以上,Mouse MLを想定して書いてみました.

ついでに「ハムスターの本」というのも買って来ましたが,「おじいちゃんをいじめてはいけません」という[USER0054]の厳しい勧告があったので書評はひかえます.